研究課題/領域番号 |
19K10318
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
富田 和男 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60347094)
|
研究分担者 |
桑原 義和 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00392225)
五十嵐 健人 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00822876)
佐藤 友昭 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10284887)
並河 英紀 山形大学, 理学部, 教授 (30372262)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア / 薬剤抵抗性 / がん / 脂質過酸化 / 過酸化水素 / 酸化ストレス / フェロトーシス |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞の酸化ストレス応答について、細胞膜と細胞内小器官、特にミトコンドリアとの関係に焦点を絞って解析を行い、放射線および薬剤抵抗性機構を明らかにすることを目的としている。現在までに申請者らが樹立した放射線をはじめとした酸化ストレスに対して抵抗性を示すCRR細胞および感受性を示すρ0細胞を用いて実験を行い、以下の結果が得られている。 1.細胞膜の主要な構成成分であるDOPCおよび酸化脂質であるPOVPCの割合を変化させたリポソーム膜モデルを用いて過酸化水素の取り込み実験を行った。その結果、脂質の酸化割合が増加すると、過酸化水素の細胞内への取り込みが増加することがわかった。実際、HeLaおよびSASのCRR細胞に酸化脂質を加えることにより、過酸化水素への抵抗性が減少することも明らかとなった(Tomita et al, Cancer Sci 2019)。 2. ρ0細胞においてリポキシゲナーゼ(ALOX)の発現を調べたところ、遺伝子、タンパク質発現ともにALOX12および15で亢進していることがわかった。また、COX2の遺伝子発現量およびヒドロキシラジカルの量がρ0細胞で親株に比べ多いことも判明した。さらに、ALOXの阻害剤を加えると、過酸化水素の細胞への透過性が高まり、 脂質の過酸化も起きにくくなることがわかった (Tomita et al, Cancer Sci 2019)、 3. CRR細胞においてmiR-7-5pの発現抑制を行うことにより、放射線抵抗性キャンセルされることが明らかとなった。また、親株でmiR-7-5pの過剰発現を行うと、放射線抵抗性となった。さらに、miR-7-5pによる放射線抵抗性を制御する因子としてmitoferrin を見いだした (Tomita et al, BBRC 2019)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、リポソーム膜モデルを用いた過酸化水素の取り込み実験を行うことによって、膜の脂質酸化度合いによって過酸化水素の細胞内透過率が変わることを明らかに出来、さらには、実際の細胞でも酸化脂質による過酸化水素抵抗性の制御が可能であることを明らかに出来たこと、ALOXの発現と過酸化水素抵抗性に相関が見られたこと、CRR細胞において、miR-7-5pが抵抗性を規定している因子の1つであること等を証明でき、これらの結果をまとめたものが、国際学術誌にアクセプトされるに至ったため。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究結果を踏まえ、残り2年の研究期間において以下の実験を行う予定である。 ・CRR細胞にALOXを過剰発現することにより過酸化水素抵抗性がキャンセルされるか。 ・ミトコンドリア電子伝達系の各サブユニットの阻害剤もしくは活性化剤による効果。 ・miR-7-5pの下流因子と過酸化水素抵抗性について。
|