研究課題/領域番号 |
19K10320
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
飯田 昌樹 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (70613511)
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研究分担者 |
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30545059)
光藤 健司 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70303641)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔癌 / ICGラクトソーム / セラノスティクス |
研究実績の概要 |
口腔癌の標準治療は手術であるが、術後の機能障害や審美障害によるQOLの低下が問題と なる。申請者らは臓器温存可能な新たな治療戦略として、超選択的動注化学放射線療法を行い手術と遜色ない治療成績を報告してきた。超選択的動注化学放射線療法の原発制御率は非常に高いが、頸部の転移リンパ節に対する治療効果は限定的であり、その場合は頸部郭清術を行う必要がある。しかし頸部転移リンパ節に対する超選択的動注化学放射線療法の治療効果を正確に画像診断することは難しく、頸部郭清の要否あるいはタイミングについて判断が難しい場合もある。そこで、診断と治療を同時に実現するセラノスティクス(Teranostics=治療 Therapeutics+診断 Diagnostics)という概念に注目し、これを可能とする物質としてICGラクトソームに着目し研究を計画した。ICGは腫瘍選択的に集積する性質と、800nm付近に吸収波長を有し同波長で光照射を行うと発熱するとともに活性酸素を発生させることが知られており光線力学療法が可能な光増感剤でもある。したがってICGラクトソームは、腫瘍イメージングによる診断と光線力学療法による治療というセラノスティクスを実現可能な物質である。本研究の目的は、ICGラクトソームを用いたセラノスティクスを口腔癌頸部LN転移モデルに応用してその有用性を明らかにすること、また放射線治療後の腫瘍組織においてセラノスティクスが有効であるか検証することである。 平成31年度は、家兎舌癌頸部LN転移モデルの確立とICGラクトソームによる生体イメージングの検討を予定していた。前者は予定通り研究が進んだが、試薬の問題のため後者の研究が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者らはマウス舌癌モデルにおいて手術後におこるLN転移を想定し、OSC-19ヒト舌癌 細胞株を用いて舌腫瘍を作成し、腫瘍を部分切除するモデルを構築し、ライブイメージングで解析したところ腫瘍切除群では優位に頸部LN転移が起こることを明らかにしてきた。今回、このモデルを家兎に応用し、さらに残存腫瘍を根治切除することで頸部転移LNのみを残存させる家兎舌癌頸部LN転移モデルの構築を行った。 引き続いて、家兎舌癌頸部LN転移モデルに対する生体イメージングの検討を行うために、尾静脈からICGラクトソームを投与し、ICGラクトソームによる蛍光の確認と、ルシフェリン発光との比較を行う予定であったが、ICGラクトソーム試薬が十分に調達できなかったため、実験がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成32年度は、ICGラクトソームを必要量調達できるよう関係各所と調整を行い、平成31年度に予定していた、家兎舌癌頸部LN転移モデルに対する生体イメージングの検討を行う。また、それに引き続いて頸部転移LNに対するPDTの検討を行う。800nmの波長のレーザー照射にてPDTを施行し、照射強度、照射時間を変化させて至適条件を特定する。家兎頸部LN転移モデルを、Control群、レーザー照射単独群、ICGラクトソーム単独群、PDT群に分け、週1回で計3回治療を行い、LNの組織標本を作成し、HE染色、TUNEL法、免疫組織染色で評価を行う。 また、家兎舌癌頸部LN転移モデルにおいて外頸動脈を剖出しICGラクトソームを動脈注射する動注モデルの確立を行う予定である。 ICGラクトソームが手に入らない場合には、代替試薬を用いた代替実験に変更することも検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
家兎舌癌頸部LN転移モデルに対する生体イメージングの検討を行うために、尾静脈からICGラクトソームを投与し、ICGラクトソームによる蛍光の確認と、ルシフェリン発光との比較を行う予定であったが、ICGラクトソーム試薬が十分に調達できず、これに関わる費用が未支出となったため。 予定した実験を遂行するため、平成32年度に支出する予定である。
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