研究課題/領域番号 |
19K10324
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
一戸 達也 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40184626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レミフェンタニル / 組織血流量 / 組織酸素分圧 / デスフルラン / セボフルラン |
研究実績の概要 |
平成25年度基盤研究(C)(一般)において「組織血流量の制御に基づく口腔外科手術のための新しい全身麻酔ストラテジー」を検討した結果、揮発性麻酔薬、静脈麻酔薬のいずれの麻酔であっても、レミフェンタニルを併用して軽度の過換気状態にすることによって、下顎骨骨髄やその他の口腔組織血流量が減少し、出血量の軽減に有用であることが示唆された。次いで、平成28年度基盤研究(C)(一般)において「口腔・顎・顔面手術後の良好な創傷治癒を目標とした全身麻酔ストラテジーの立案」を実施した結果、セボフルランに0.4μg/kg/minのレミフェンタニルを併用すると、下顎骨骨髄や咬筋の組織血流量は減少するが、同時に組織酸素消費量が減少するために、組織酸素分圧が良好に維持されることを明らかにした。そして、この組織酸素分圧は動脈血二酸化炭素分圧の変化に影響されないことを示した。 そこで、令和元年度基盤研究(C)(一般)「組織酸素代謝の維持に基づく口腔顎顔面外科手術のための新しい全身麻酔ストラテジー」では、疑似手術侵襲下において日常臨床で一般的に使用される各種全身麻酔薬とレミフェンタニルをどのような投与濃度や投与速度で組合せれば最善の結果が得られるのかを検討し、良好な組織酸素代謝の維持に基づく口腔顎顔面外科手術のための新しい全身麻酔ストラテジーを考察する。 令和元年度は、循環動態の抑制が小さいデスフルランと比較的大きいセボフルランを用いて、血圧、心拍数、心拍出量など体循環と組織血流量および組織酸素分圧との関係を比較検討した。その結果、デスフルランとレミフェンタニルの組合せの方が、セボフルランとレミフェンタニルの組合せよりも血圧を良好に維持したが、下顎骨骨髄および咬筋の組織血流量と組織酸素分圧の低下は両群で差がなかったことから、歯科口腔外科手術では前者の組合せの方が有利であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、デスフルランとセボフルランを用いて、血圧、心拍数、心拍出量など体循環と組織血流量および組織酸素分圧との関係を比較検討した結果、デスフルランとレミフェンタニルの組合せの方が、セボフルランとレミフェンタニルの組合せよりも血圧を良好に維持したが、下顎骨骨髄および咬筋の組織血流量と組織酸素分圧の低下は両群で差がなかったことから、歯科口腔外科手術では前者の組合せの方が有利であることが示唆された。この内容は現在、投稿中である。これらの結果は、本研究のテーマである「組織酸素代謝の維持に基づく口腔顎顔面外科手術のための新しい全身麻酔ストラテジー」の基礎データとなるものであり、今後の進展のために有用な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、疑似手術侵襲としてのオトガイ神経電気刺激を用いて適切な刺激条件を検討中である。適切な刺激条件を設定した後に、各種の薬物の組合せによって組織血流量と組織酸素分圧がどのように変化するかを観察する予定である。
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