研究課題
本研究は、胎生期に左右の口蓋突起が癒合し、口蓋が一旦形成された後に、癒合部が解離して口蓋裂が発症するという、従来の概念とは異なる口蓋裂の発症機構を見出してきた。マウスでは、基底膜の消長、代謝について研究を行ったところ、TCDD投与群の口蓋離開部を含む口蓋粘膜で上皮および基底膜の断裂を認めた。また、口蓋後方では、口蓋突起は離開しており、口蓋中央部で、口腔側では、口蓋の離断を認め、上皮の欠損および、同部に血球細胞も確認された。鼻腔側では上皮および間葉系組織の連続性を認めた。口蓋前方部では、癒合を認めたが、細胞の走行の異常を認めた。また、 同部で TUNEL陽性細胞を認めた。口蓋裂を100%発症する濃度のTCDDに暴露された口蓋癒合期のマウス胎仔では、複数の個体において口蓋癒合途中で離開に転じている場合があることが確認された。上皮組織の異常な細胞増殖や、細胞間接着の低下、および間葉系細胞の増殖阻害が口蓋の離開を生じる要因の一つである可能性が示唆された。口蓋裂を発症するまでの段階において一度癒合した口蓋が離開に転じる機序を解明することにより、離開を阻止する要素が発見される可能性が考えられ、新たな口蓋裂発症の予防法の確立につながることが期待される。また、遺伝子研究において、ベトナム人における非症候性口唇裂患者105人と非症候性口唇口蓋裂患者112名を含む217名とコントロール273名に関して、TFAP2A(rs1675414およびrs303048)および8q24(rs987525)からなる3つのSNPに関して調査したところ、TFAP2A rs1675414は非症候性口唇裂と関連しており、ケースコントロールおよび家族ベースの両方で再現された。したがって非症候性口唇裂の病因にTFAP2Aの関連がある可能性を示した。
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