研究課題/領域番号 |
19K10326
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 哲也 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (00451451)
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研究分担者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
大廣 洋一 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (40301915)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50301891)
松田 彩 北海道大学, 歯学研究院, 特任助教 (60514312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エナメル上皮腫 |
研究実績の概要 |
代表的な歯原性腫瘍であるエナメル上皮腫は、良性腫瘍であるにもかかわらず顎骨内を浸潤性に増殖する。本研究ではその機序を解明することを目的としている。エナメル上皮腫は主に20代から30代に生じ、自覚症状に乏しく成長が緩徐であることから、腫瘍が大型化して発見されることが多い。通常の良性腫瘍に準じた摘出術では高頻度に再発することから、若年者にもかかわらず顎骨を広範囲に切除しなければならないことも多い。本腫瘍の再発機序の解明は非常に重要である。
本研究では、エナメル上皮腫の組織学的特徴であるbudding構造に着目し、その部位でのタンパク質発現と機能について解析を行ってきた。budding構造は腫瘍から間質への出芽様構造のことであり、これが浸潤性増殖に関連すると考えられている。これまで我々は、budding領域にRNA結合タンパクであるHuRと⊿N63が高発現していることを明らかにしてきた。また、in vitroではHuRタンパクは⊿Np63 mRNAに結合し、⊿Np63のタンパク発現に関与することが明らかとなった。 2020年度は、ヒトエナメル上皮腫細胞であるAM-1細胞を用い、コラーゲンゲル内での3次元培養を行った。AM-1細胞がコラーゲンゲル内へ浸潤性に増生している領域では、mRNAの安定化に重要なHuRの核から細胞質への局在変化が観察された。また、HuR阻害剤であるCMLD2で処理したところ、コラーゲンゲル内への浸潤性増殖が抑制された。また、CMLD2はAM-1細胞の細胞移動を阻害すること(Wound healing assayにて)、増殖を阻害すること(MTS assayにて)が明らかとなった。 これらのことからHuRがエナメル上皮腫細胞の活性に重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はcovid-19の流行によって非常事態宣言が発令され少なからず研究活動の縮小を余儀なくされたが、研究は進捗しており研究はおおむね順調に進展していると判断した。その主な理由としては、エナメル上皮腫の免疫組織学的検討により明らかとなったBudding領域でのHuRおよびp63発現が、ヒトエナメル上皮腫細胞AM-1を用いたin vitroでの3次元培養でも再現できたことによる。これはAM-1細胞を用いたin vitroでの実験系が有意義であることを示している。また、HuR阻害剤であるCMLD2によってAM-1細胞の増殖、運動などが阻害されたことから、HuRの阻害はエナメル上皮腫の新規治療法の開発につながると考えられたことは意義深い結果であったことも、研究が順調に進展していると判断した一因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後もエナメル上皮腫のbudding領域について検討を行う。 1. エナメル上皮腫の浸潤様式をHE染色連続切片を用いて検討し、腫瘍と周囲の間質、骨との関係について病理組織学的に検索する。 2. CRISPR-CAS9システムを用いて⊿Np63ノックアウト細胞を樹立し、細胞にどのような変化が起きるかを調べる。組織学的には、budding領域では細胞の運動能や浸潤能が上昇していることが考えられるため、⊿Np63ノックアウト細胞やHuRの阻害剤であるCMLD-2を用いて機能的な検索を行う。 3. budding領域ではEMTが起きている可能性が考えられる。そこでE-Cadherinやvimentin、TGF-Bなどの発現や細胞内局在について検討する。 4. 免疫組織学的に⊿Np63および、その下流因子について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はcovid-19の流行によって非常事態宣言が発令され少なからず研究活動の縮小を余儀なくされた。そのため物品や試薬の購入、旅費が減少し次年度使用額が生じた。
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