研究課題
エナメル上皮腫は、若年者に生じる歯原性腫瘍で、良性にも関わらず顎骨内を浸潤性に増殖する。それゆえ摘出のみでは再発をきたすことがあり顎骨切除術が選択されることが多い。歯のみならず顎骨の喪失は若年者にとっては大きなQOLの低下に繋がるが、浸潤性増殖あるいは再発の機序は不明で、本研究ではその機序の解明を主な目的としている。エナメル上皮腫の組織学的な特徴に、tumor buddingとよばれる出芽様構造が挙げられる。エナメル上皮腫の亜型である単嚢胞性エナメル上皮腫ではbuddingが観察されるmural typeの再発率が高いことから、buddingが再発に関連していると考えられている。我々はこれまでbudding領域の細胞ではHuRと⊿Np63が高発現していること、HuRが⊿Np63 mRNAに結合・安定化させタンパク質発現を高めていることが明らかとなった。また、⊿Np63をノックアウトしたAM-1細胞は接着タンパクであるE-cadherinの発現が上昇した。このことからbuddingでは細胞間の接着が弱まり形態変化を引き起こすことが考えられた。本年は、接着因子の低下によってbudding形成を行うためには、間質の器質的な変化が必要と考え、ヒアルロン酸結合蛋白やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの組織免疫染色を行った。しかし、腫瘍実質および間質でのこれらのタンパク質の変化は認められなかった。⊿Np63の発現をノックアウトしたAM-1細胞では、E-cadherinが減弱していたことから、間葉系マーカーについて検討したが、vimentin等間葉系マーカーの発現は増加していなかった。そこで、この細胞株を用いて増殖活性をMTS assayにして検討したが、コントロール細胞との増殖活性の差は認められなかった。
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