研究課題/領域番号 |
19K10329
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
船山 昭典 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80529686)
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研究分担者 |
田沼 順一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20305139)
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80242436)
三上 俊彦 新潟大学, 医歯学系, 助教 (90595745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 癌関連線維芽細胞 / 癌微小環境 / TGF-β / SOX9 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌の悪性度を規定する因子として癌細胞自体の性質だけでなく、癌細胞周囲の間質とのインターラクション、すなわち、癌微小環境があり、口腔扁平上皮癌において、この癌微小環境をin vitroで再現する方法は依然確立していない。本研究では、癌微小環境の主成分である癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts: CAFs)が癌細胞の浸潤に関与することに着目し、CAFsの機能解析やがん細胞との相互作用を解明するためのツールとして、in vitro で口腔扁平上皮癌細胞株とCAFsを用いた3次元培養モデルを作製し、CAFsが 3次元培養環境におけて癌の増殖能・浸潤能・遊走能にどのように影響を与えるのかを分子生物学的および免疫組織学的に解明することを目的とした。 昨年度までに、癌微小環境を模した3次元モデルの製作方法および浸潤能の評価方法について確立させることに成功した。通常の線維芽細胞と比較しどの細胞株においてもCAFsの存在は有意に浸潤が促進される結果を得た。また本モデルにおいて、転写因子のひとつであるSOX9は浸潤した癌細胞で発現が亢進していた。 以上の結果を受けて、浸潤に関わる因子としてSOX9の機能分析を行った。SOX9の発現が浸潤に関与するのかを本モデルを用いてTGF-β阻害剤の添加およびSOX9のノックダウンを行った。その結果、TGF-β阻害剤の添加およびSOX9のノックダウンによりSOX9の発現が抑制され、浸潤が有意に抑制される結果を得た。また平面培養において遊走能試験を行い、CAFsの培養上清下では癌細胞の遊走が促進されるが、TGF-β阻害剤の添加の添加により遊走能が抑制される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ初年度の計画通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえて、TGF-βはSOX9の発現の上流に位置し、発現の制御に関わることからCAFsと癌細胞の相互作用においてTGF-β/SOX9経路が重要な役割を担っていることが考えられる。今後はより分子生物学的視点からTGF-β/SOX9経路について検討を進めていく方針である。具体的にはTGF-β添加によるSOX9やSmadシグナルタンパクの変化を確認し、癌の浸潤に関わるメカニズムについて明らかにしていく。また外科切除標本を用いてCAFsと癌浸潤先端におけるSOX9の発現との関係についても検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の器具で実験出来たため。
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