研究課題/領域番号 |
19K10331
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
明石 昌也 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40597168)
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研究分担者 |
木本 明 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30597167)
長谷川 巧実 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50546497)
筧 康正 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (70772896)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨髄炎 / 歯性感染症 / 血管新生 / リンパ管新生 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症などに対し用いられる骨吸収抑制薬や、口腔癌に対し施行される放射線照射等の医療行為が素因となる顎骨骨髄炎は、近年患者数の増加に伴い顎口腔外科領域において最も新たな治療法開発が期待される難治性疾患の一つである。本研究の目的は、近年感染の進展にも関与していることが明らかとなりつつある血管・リンパ管新生をターゲットとし、歯性感染症-顎骨骨髄炎移行メカニズムを解明することである。 研究の端緒として、まず血管新生のマーカーとなりうる分子の検討を行なった。近年動脈硬化や高血圧、腫瘍の増大における病的な状態における血管新生に関与している可能性が示唆されている血管内皮細胞間接着複合体構成分子に注目した。この分子についてはマウスやヒト培養細胞を用いた研究はこれまでに行われてきたが、ヒトの組織内での発現や局在部位を確認した報告は稀少であった。昨年度の研究結果より、この分子がヒトの組織内でも特に非炎症部位の血管に比べ炎症部位の微小血管等に発現が強く、病的な血管のマーカーとなり得る可能性が示唆され、この結果を英文査読付き学術誌に投稿し、採択された。次に、放射線性骨髄炎で顎骨内を感染がどのように侵入部から拡散し、特に顎関節方向へと拡散するのかを調査した。放射線性顎骨壊死では放射線性の影響と思われるダメージが皮質骨のすぐ内側で強く認められ、同部を介して感染が顎関節方向へ進展する可能性が考えられた。こうした下顎骨内をどのように感染が進展するかを手術検体を用いて詳細に調査した研究は希少であり、当該年度この研究成果を英文査読付き学術誌に投稿し、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染の進展にも関与していることが明らかとなりつつある血管・リンパ管新生をターゲットとし、歯性感染症-顎骨骨髄炎移行メカニズムを解明する上で、病的な状態での血管新生を適切に評価することは重要である。昨年度この評価のためのマーカーとなり得る分子を探索し、マーカーとして適切な可能性を英文査読付き学術誌に投稿し採択された。当該年度は骨髄炎の進展において下顎骨内をどのように感染が波及しているのかを調査した論文が採択された。当初の本研究の目的は歯性感染症から顎骨骨髄炎へと移行するメカニズムの解明と、その際に血管新生とリンパ管新生に着目する予定であり、現在リンパ管新生の顎骨骨髄炎への関与を示唆する研究に着手している。よって、「概ね順調である」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度で明らかにした病的な状態において特異的に機能している可能性がある血管新生マーカー等を用いて、顎骨骨髄炎の免疫染色を継続して行っていく。また、本研究のもう一つの目的であるリンパ管新生に関する研究にすでに着手している。この研究は培養細胞や細菌毒素を用いた研究を想定している。次年度は本申請研究の最終年度のため、当初の目的に可及的に答えを出せるように研究を推進する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文報告に要する予算も今年度は要した。一方で、免疫染色に用いる新たな抗体等の高額な試薬を想定以上に購入する必要がなかったため、次年度に繰り越した。次年度は本申請研究最終年度のため、学会・論文報告等でも使用することが増えると予想され、次年度分として請求する。
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