研究課題/領域番号 |
19K10334
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 洋輔 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (60636554)
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研究分担者 |
住田 知樹 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (50314951)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 唾液腺導管癌 / Dormancy therapy |
研究実績の概要 |
現在、ヒト口腔がんの約85%は扁平上皮癌であり、残りの15%を主に唾液腺癌、各種組織型の肉腫が占める状態である。ヒト唾液腺癌は、一般に5年生存率は高いものの10年、20年といった長期の生存率は惨憺たるものである。だが、これは言い換えれば、発育が他の癌腫、肉腫に比べ遅いことを意味する。つまり、発症のピークが中年期以降ということを考えると、さらに腫瘍の進展を遅らせることが出来れば腫瘍を根治に至らしめなくても担癌状態で余命を全うできる可能性があると言う事を意味する。 これまでの研究にて、各種性ホルモンレセプターや標的遺伝子を絞りこみ、主に唾液腺癌を治療のターゲットとしてきた。今回これまで主に検索を行ってきた腺様嚢胞癌に加え、唾液腺癌の中でも特に予後の悪いとされる、唾液腺導管癌(以下:HSY)に焦点を置き、その治療法あるいはDormancy therapyの開発を行うことを目的とした。唾液腺癌の細胞株である、HSG、HSY(唾液腺導管癌細胞株)といった唾液腺腫瘍株を使用し、予備実験の段階ではあるがいずれの株も性ステロイドホルモンレセプターの発現は失っている可能性が高いと考えている。このことからも腫瘍の悪性化にレセプターの喪失が関与していることが伺える。本年度においては主にHSY(唾液腺導管癌細胞株)の細胞を使って、細胞レベルでの腫瘍の増殖、浸潤などの抑制を遺伝子発現を抑えることで確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般に扁平上皮癌に比べ発育の遅い唾液腺癌では1つのKey moleculeをノックアウトすることによりその発育をさらに遅らせ、Dormancyの状態に誘導できる可能性を示唆している。この仮説の証明のためには動物実験は欠かせず、特にHSY細胞を中心として移植腫瘍での発育を確認したいと考えている。よって、今後もヌードマウス移植腫瘍を使用し、in vivoでの効果を確認する。明らかにしたいアンドロゲンーアンドロゲンレセプターシステムの役割を解明するために使用する細胞、ベクターなどはそろっている状況ではあるが、新型コロナウィルスの影響もあり、研究を中止せざるを得ない時期もあった。そのため、研究・発表等が遅れている状況ではあるが、期間内に遂行したい。
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今後の研究の推進方策 |
研究1、2年目において主にHSYの細胞を使って、細胞レベルでの腫瘍の増殖、浸潤などの抑制を確認してきた。 3年目は、ヌードマウス移植腫瘍を使用し、in vivoでの効果を確認している段階である。先にも述べたが、口腔がんの約85%を占める扁平上皮癌などの癌腫では、その進行は唾液腺癌に比べ一般に早くDormancyを得る事は難しい。ひとつの理由としては進行に伴い、様々な遺伝子変異が蓄積し、もはや2、3個の遺伝子操作をするのみでは、腫瘍発育に追いつかないことが考えられる。しかし、我々はこれまでに唾液腺癌でのマイクロアレイの解析などからID1遺伝子の発現の増強やタンパク発現の増強を明らかにし、発表してきた(T Sumida, PY Desprez. et al. BMC Cancer 201313:141, 2013)。つまり、この遺伝子発現を抑えることにより、細胞の増殖、浸潤を抑えることに成功している。一般に扁平上皮癌に比べ発育の遅い唾液腺癌では1つのKey moleculeをノックアウトすることによりその発育をさらに遅らせ、Dormancyの状態に誘導できる可能性を示唆している。この仮説の証明のためには動物実験は欠かせず、特にHSY細胞を中心として移植腫瘍での発育を確認したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究所において明らかにしたいアンドロゲンーアンドロゲンレセプターシステムの役割を解明するために3年目を中心に、ヌードマウス移植腫瘍を使用し、in vivoでの効果を確認するために次年度使用額が生じたと考える。 今後もヌードマウス移植腫瘍を使用し、in vivoでの効果を確認する。明らかにしたいアンドロゲンーアンドロゲンレセプターシステムの役割を解明するために使用する細胞、ベクターなどはそろっている状況ではあるが、新型コロナウィルスの影響もあり、研究を中止せざるを得ない時期もあった。そのため、研究・発表等が遅れている状況ではあるが、期間内に遂行したい。
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