研究課題/領域番号 |
19K10337
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
荻 和弘 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40433114)
|
研究分担者 |
西山 廣陽 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60749563)
宮本 昇 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (80749565)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 再発口腔癌 / 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究実績の概要 |
再発口腔がんに対し免疫チェックポイント阻害剤の投与を行った症例を対象に、がん関連遺伝子の変異が後続の化学療法の奏効率を規定する因子となるかを検索した。腫瘍組織を包埋したFFPEからTaqMan RNase P検出試薬キットを使用してDNAを抽出、精製した。 がん関連遺伝子変異については次世代シークエンサーをもちいて検出した。また、PD-L1、CD-8 の発現は免疫組織化学染色により検討した。 臨床病態で著明な変化を示した2例のうち1例はドライバー遺伝子の変異を示していたが、化学療法後にPDとなり腫瘍進行の制御は不能であった。残り1例はドライバー遺伝子の変異を示しニボルマブ投与後に偽増殖を示し、その後の救済化学療法が著効しCRとなり現在も無治療で再発を認めない。 再発口腔がんでドライバー遺伝子の変異と免疫チェックポイント阻害薬の関連性を調べた報告はなく、がん関連遺伝子変異はネオアンチゲンとなり、ニボルマブ投与を先行することにより体内の免疫環境が変化していると考えられる。また著効例では、PD-L1陽性率が高く、さらに高度なCD-8陽性T細胞浸潤を示していた。 多くのがん腫で腫瘍浸潤リンパ球(TILs)の多寡とICIsの治療効果との関連性が示されているが、再発口腔がんにおいても抗PD-1療法著効例でCD8陽性T細胞が腫瘍局所に多く浸潤しているとされる。一方、非奏功例の解析からは、CD8陽性T細胞においてTIM-3やLAG-3などの複数の免疫チェックポイント因子が多く発現している場合、抗PD-1/抗PD-L1単独阻害に対して治療抵抗性が認められる。これらの症例ではその発現に応じた複数のICIsによる介入が有用である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られた研究成果をOral oncologyに投稿しアクセプトされ、研究成果を公開している。今後は本年度の研究内容をさらに発展させていく必要があり、万一研究計画が進まない場合は、速やかに対応策を立てて対応する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はPD-L1分子やCD8陽性T細胞の免疫染色、細胞表面のHLA分子の機能解析を加えて研究を進めていく予定である。当科では10-20例/年の再発口腔癌を経験しており研究の遂行には問題ない。一方で免疫チェックポイント阻害薬や後続の救済化学療法が著効しない症例の分析も必要である。口腔がん患者から得られた手術検体の一部を培養し、継代を重ねて新規がん細胞株の樹立を行う。がん細胞が増殖したのち免疫不全マウスに移植し、H-E染色標本で扁平上皮癌であることを確認する。さらに樹立した新規口腔がん細胞株表面におけるHLA発現レベルをFACS解析にて確認する。オプジーボ投与後に救済化学療法が著効しない症例は、HLA分子がclassIあるいはClassII拘束性に機能しているのかどうかを検証する必要があり、速やかに研究に着手していく。 抑制性T細胞や骨髄由来免疫抑制細胞は腫瘍微小環境において有効な抗腫瘍免疫応答を阻害し治療標的と考えられる。しかしながら再発口腔がんにおいては特に「抑制性T細胞」とされた集団、特にFoxP3の多寡が予後良好とされる報告が多い。すなわち抗腫瘍免疫を負に制御していると考えられる免疫制御細胞集団を標的とする場合は、より正確にこれを同定し、腫瘍局所における効果的な排除が治療戦略上重要である。これらを評価するためにflow cytometerによる解析に加え、多重免疫染色法をもちいることや腫瘍局所に浸潤する細胞のサブタイプの同定や定量を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究計画は順調に進み、実験に使用する試薬類が減ったため次年度に持ち越した。
|