研究課題
進行口腔癌に対し動注化学放射線治療で複数回シスプラチンを投与し、その後局所再発または転移を認めた症例を対象とした。これらの症例から1)遺伝子変異数、2)PD-L1とCD8陽性T細胞浸潤の陽性率の割合を計測し、免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)の治療効果と相関関係があるか解析を行う。これらの結果をもとに再発あるいは転移に対する後続治療としてICIsで治療後、化学療法が有効か検証した。nivolumab投与後の化学療法におけるresponderとnon-responderそれぞれのがん関連遺伝子変異について、次世代シークエンサーを用いて解析した。遺伝子変異解析の結果、ドライバー遺伝子の変異やコピー数の異常を示した症例のうち、免疫染色にてPD-L1やCD8T細胞浸潤の陽性率が高い症例において後続の化学療法に奏功を示した。がん関連遺伝子の変異はneoanitigenとなり、nivolmab投与を先行することにより体内の免疫環境が解除され、抗腫瘍免疫応答が増強している可能性が示唆された。術前の血漿サンプルからDNAを採取し化学療法前後でWhole Exome Sequence(WES)にて遺伝子変異、特に標的となるドライバー遺伝子の変異を同定した。遺伝子変異数に加えて抗原を提示するヒト白血球抗原(HLA)のgenotypeがICIsの治療効果に影響を与えることが予測され、今後HLAのヘテロ接合体を有する患者においてはICIsの治療効果が良好で遺伝子変異数の差で治療効果に差が出てくる可能性がある。患者血漿サンプルから得られるDNA収量がごくわずかであった場合は、残りの血漿サンプル全量を使用してスケールアップし、最終的には約100 ngのDNA収量があればコントロールとして使用した。一方、生検組織からの腫瘍サンプルからはWESライブラリー調製に十分な量のDNAが得られた。
2: おおむね順調に進展している
生検時の腫瘍サンプルからはWESライブラリー調製に十分な量のDNAが得られており、また血漿から効率良くDNAが採取できる工夫を行っている。PD-L1やCD-8陽性T細胞の免疫染色も問題なく施行出来ている。
現状では大幅な実験計画の変更はなく、再発がんのサンプル取集と遺伝子変異数の解析を行う予定である。遺伝子変異数に加えて、抗原を提示するヒト白血球抗原(HLA)のgenotypeがICIの治療効果に影響を与えることが予測され、HLAのヘテロ接合体を有するかどうかの解析も行う予定である。
【次年度使用額が生じた理由】コロナ禍で試薬の入手に支障が出たため。また学会参加費や旅費の支出ができなかったため。【次年度の使用計画】口腔癌遺伝子解析パネルをもちいて患者血漿サンプルと腫瘍組織からDNAを抽出し遺伝子変異を解析するシステムを構築しており、この実験系で使用する試薬の購入に充当する。
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