研究実績の概要 |
・様々な悪性腫瘍においてPD-L1,CD8の発現が抗PD-1/抗PD-L1抗体の治療効果に影響を及ぼしていることが示されているものの, 口腔扁平上皮癌(OSCC)では明らかではない. また,OSCCにおいてNOTCH遺伝子異常は10~20%程度であり,NOTCHシグナルは化学療法抵抗性に関与している報告は多く,NOTCH1/2の遺伝子変異がある癌腫では化学療法が著効する可能性があるものの免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)の奏効率に影響を与えるかは不明である.本研究では再発口腔癌10例の生検検体を用いた免疫染色により,PD-L1とCD8の強発現を認める5例の生検検体とその末梢血からのDNAを抽出し,次世代シークエンサー(NGS)を用いて全エクソームシークエンス(WES)解析を行い,遺伝子変異やコピー数異常を解析した. ・OSCCの5例の治療効果はPRが1例,SDが1例,PDが3例であった. WESによる遺伝子変異解析ではSD評価の症例ではnonsynonymous SNVが65, synonymous SNVが153, frameshift deletionが1, frameshift insertion が4, nonframeshift deletionが1, nonframeshift insertionが2種類, CNV は増幅が73, 欠失が13種類認められた. SNPの変異にはドライバー遺伝子であるTP53の変異以外に認められなかった. 一方PR評価の症例では, nonsynonymous SNVが91, synonymous SNVが49, frameshift deletionが1, frameshift insertion が1, nonframeshift deletionが4種類, さらにCNV は増幅が51, 欠失が5種類認められた. SNPの変異にはドライバー遺伝子であるTP53の変異の他、NOTCH2NLRの遺伝子変異が含まれていた. ・PD-L1, CD8の発現という免疫環境下で, NOTCH1,2などの遺伝子変異がネオアンチゲンとなり, ニボルマブの投与により免疫寛容が解除され抗腫瘍効果が発揮されたと考えられた.
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