申請者は、受容体分子系統解析により、骨髄炎などの骨吸収性疾患においてほとんど注目されていなかった生理活性脂質の内、血小板活性化因子(PAF)やロイコトリエンB4(LTB4)が骨吸収に重要で、その受容体(GPCR)抑制が治療上有用であることを見いだした。この分子系統解析により、近傍GPCRの内TDAG8にも骨吸収抑制作用のあることを発見した。しかしながら、細胞膜から切り出されるPAFのようなグリセロール骨格を持つ生理活性脂質が、いかに細胞外に放出され、さらに受容体に作用するかという機構については明らかでなかった。本研究は、「生理活性脂質の受容体アンタゴニストを用いた」治療、あるいは「生理活性脂質産生制御による」治療を念頭に、GPCR関連生理活性脂質のシグナル伝達機能を明らかにすることを目的としている。 申請者は、生理活性脂質合成に関わる酵素群の研究を行い、進展させた。すなわち(PAF合成酵素も含む)リゾリン脂質アシル転移酵素群が炎症制御・骨関連細胞分化に関与することを示した。しかしながら、さらに骨炎症に関わる研究を実施しようとしたところ、コロナ感染の影響で、対面による協調的研究のスムーズな遂行ができない状況になった。コロナ感染の影響は減少したが、さらに所属部局の変更もあり、研究環境整備に時間を要し、研究に影響した。
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