研究実績の概要 |
1.ヒト扁平上皮癌細胞株からの癌幹細胞の樹立:ヒト口腔扁平上皮癌原発巣から樹立した浸潤性の異なる細胞株SAS-H1(高浸潤性)、SAS―L1(低浸潤性)とその親株にあたるSASから癌幹細胞を樹立することとした。各細胞株はEZSHERE SP(スフェロイド形成培養容器)を用いて血清非存在化に培養を行い、基質面に接着しない球形集塊形成(スフェロイド形成)によって癌幹細胞を樹立した。最初に得られたスフェロイドをスフェロイド・キャッチで回収し、再びスフェロイド形成させる作業を5回行った。その結果、スフェロイドはいずれもスフェロイド形成率が向上し純度の高い癌幹細胞であることが推測された。 2.スフェロイド形成から得られた癌幹細胞の特徴:5回繰り返しスフェロイド形成を行い得られた癌幹細胞について、幹細胞表面マーカーとして知られているCD44, CD133, CD29、さらに幹細胞の自己複製能力を示すマーカーとしてOCT-4, Nanog, SOX2, Nestinの発現についてmRNAとタンパク質発現を検討した。その結果、CD44, CD133がいずれスフェロイド形成した癌幹細胞で強い発現がみられ、OCT-4, Nanog, SOX2, Nestinでも同様に癌幹細胞で強い発現を認めた。 3.樹立された癌幹細胞のRNA編集酵素ADAR1の発現変化:各々の細胞株とそこから樹立された癌幹細胞で、ADAR1のmRNAとタンパク質発現を比較検討した。その結果、SAS-H1(高浸潤性)または親株SASから得られた各々の癌幹細胞では、ADAR1の発現がいずれも亢進していた。一方、SAS-L1(低浸潤性)から得られた癌幹細胞では、ADAR1の発現に差は認められなかった。
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