研究課題/領域番号 |
19K10342
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
奥村 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (60194510)
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研究分担者 |
細川 洋一郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (70173599)
小林 美智代 奥羽大学, 歯学部, 講師 (80316265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スフェロイド形成 / ADAR1 / RNA編集酵素 / 癌幹細胞 / 上皮ー間葉転換 |
研究実績の概要 |
1. 癌幹細胞におけるRNA編集酵素ADAR1の発現異常の解析:癌幹細胞を樹立した親株と癌幹細胞の比較によって、ADAR1の発現量を定量的RT-PCRを用いて測定したところ、スフェロイド形成能が維持されている癌幹細胞で、ADAR1が高発現していることを確認した。 2. スフェロイド形成能が維持されている癌幹細胞におけるADARの役割:ADAR阻害薬であるEHNA塩酸塩とpentostatinの処理を行った癌幹細胞で、増殖活性、細胞遊走能、基底膜浸潤能、基質分解酵素産生能を検討した。その結果、いずれのADAR阻害剤でも増殖抑制を認め、細胞遊走と基底膜浸潤能もともに低下した。また、基質分解酵素産生能をザイモグラフィーで検討したところ、親株SASと比較し産生量が減少した。 3. 癌幹細胞のADAR1を介した細胞内シグナル伝達機構による自己複製能の制御:癌幹細胞におけるADAR1のノック・ダウンによる形質変化の解析を予定し、ADAR1遺伝子に特異性を持つショート・ヘアピンRNAs(shRNA)構造を持つsiRNAを数種合成した。ノック・ダウン効率が高いsiRNAを電気穿孔で細胞導入を行ったが、shRNA設計に問題がありいずれも導入ができなかった。このため、改めて恒常的なノック・ダウンが維持できるshRNAの設計を行い細胞に導入する必要がある。 スフェロイド形成が維持される癌幹細胞についてADAR1ノック・ダウンした際、上皮ー間葉転換に影響を及ぼして間葉系形質から上皮系形質に誘導されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ここ数年の全国的なコロナ禍により、大学授業のオンライン化や対面授業とのハイブリッドがなされ、対応する人員や時間に多くを費やされてしまいました。このため、研究計画に沿って実験の遂行を速やかに行う予定です。
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今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞のADAR1を介した細胞内シグナル伝達機構による自己複製能の制御 a.癌幹細胞におけるADAR1のノック・ダウンによる形質変化の解析:得られた癌幹細胞を用いて、RNA干渉法によるADAR1特異的遺伝子ノック・ダウンを行う。現状ではADAR1遺伝子に特異性を持つショート・ヘアピン RNAs(shRNA)構造を持つsiRNAを再設計し、ノック・ダウン効率が高いsiRNAを電気穿孔法で細胞内に導入する。 b.ADAR1ノックダウン細胞の造腫瘍性の検討:寒天培地上でフォーカス・アッセイとコロニーアッセイを施行する。また、ヌードマウスの造腫瘍形成能を検討する。また、細胞増殖活性、細胞遊走能、基底膜浸潤能の変化を確認する。 c. ADAR1をノックダウンした癌幹細胞におけるmiRNA発現の検討:RNA干渉法でADAR1特異的遺伝子ノック・ダウンを行った癌幹細胞について、miRNAアレイ解析で関連するmiRNAを探索する。その結果、発現量に有意差がみられるmiRNAについてRNA干渉法やAkt、PI3K等のシグナル分子への影響をウェスタンブロット法、RT-PCRによって確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症対策により,大学授業がオンライン授業、または対面授業を交えたハイブリッド授業となり、研究計画の遂行に遅れが生じました。 研究計画のうち、ADAR1遺伝子のノック・ダウン効率が高いsi RNAを設計し細胞導入を試みたが、shRNA設計に問題がありいずれも導入ができておらず、研究の遅延が生じました。
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