研究課題
積層造形チタン表面に、混酸・加熱処理を行いラット頭蓋骨に固定を行い、①骨との結合様式の組織学的観察、②骨結合力を引き剥がし試験を行なった。A:平板チタン(既製品)、B:積層造形チタン、③混酸・加熱処理積層造形チタンの3群であった。ラット頭蓋骨に5x5mmの積層造形チタンプレートをスクリューで固定し骨膜縫合で閉創し4、8、16週後に創部の頭蓋骨を摘出した。摘出した組織をマイクロCTで観察後に①非脱灰研磨標本を作成し骨とチタンデバイスの間の組織学的変化を光学顕微鏡で行った。また井上らが考案した引き剥がし試験装置を用いて各グループの骨との結合状態を力学的に評価した。結果、引き剥がし試験においては経時的にいずれの群も骨との結合力が増加していった。またグループ間では初期には大きな差がなかったが後期には積層造形、混酸・加熱処理積層造形群の結合力が急激に増加し混酸・加熱処理群が、16週では結合力が大きく上回った。組織学的観察においては初期にチタンと骨との間に明らかな空隙が観察されたが経時的にいずれの群でもその空隙は組織で満たされていた。通常チタンプレートでは線維芽細胞や血管新生に富む組織が観察された。混酸・加熱処理を行ったチタンプレートでは骨表面から活発な骨形成が観察され、それがチタン表面に向かい経時的に活発になる様子が観察された。特に混酸・加熱処理を加えた積層造形チタンにおいてはその様子が顕著であり、積層造形チタン内部にも骨の形成が観察された。一方、平板チタンにおいては積層造形チタンのような骨との結合はほとんど観察されなかった。こうした結果より、積層造形法で作製されたチタンは既製の平板チタンに比較して骨結合能が高く、組織学的にも骨の形成を促進することが確認された。混酸・加熱処理はさらにこの骨形成を促進することも明らかとなり骨修復チタンにおいては表面性状が大きく関与することが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
現在までの進捗状況は当初の計画通りに順調に進んでいる。本年度に実施した研究は、積層造形チタンをラット頭蓋骨に固定し混酸・加熱処理による①骨との結合様式の組織学的観察②骨結合力を引き剥がし試験を行なった。結果は、引き剥がし試験によって混酸・加熱処理積層造形群の結合力が良好であった。また、組織学的観察においても混酸・加熱処理を行った積層造形チタンでは骨表面から活発な骨形成が観察され積層造形チタン内部にも骨の形成が観察された。今年度の目標である生体内での積層造形法で作製されたチタンは骨結合能が高く、組織学的にも骨の形成を促進することが確認された。さらに、混酸・加熱処理はこの骨形成を促進することも確認され、生体内での積層造形チタンへの処理法に有効性、安全性の確認という今年度目標を達成している。来年度は生体内で平行して進めている積層造形チタンプレートの骨形成の有効性や周囲組織の炎症の有無などの安全性確認を実施する。
今年度の研究成果である動物実験での成果を活かし、ヒトでの使用での積層造形チタンプレートの骨形成の有効性や周囲組織の炎症の有無などの安全性確認を実施する。また、ラットにおける研究もラマン解析や新生骨がなぜ積層造形チタン表面に活発に形成されていくのかを科学的に検証したい。その方法として擬似体液を用いた研究を分担研究者山口先生らとアパタイト結晶構造形成プロセスを走査型電子顕微鏡を用いた超微細構造学的評価により検証していく。ヒトにおいての研究は特定臨床研究法を遵守し埋入された部位の積層造形チタン周囲の組織観察や形成骨の様子をCTで観察し有効性を検証する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
日本歯科理工学会誌.
巻: 39 ページ: 29-32
Journal of Hard Tissue Biology.
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Materials. 2020; 13(22): e5104.
巻: 13 ページ: e5104