研究課題/領域番号 |
19K10353
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岡本 圭一郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50382338)
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研究分担者 |
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
柿原 嘉人 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40379938)
佐藤 努 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80334655)
高木 律男 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20143795)
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 痛み / ストレス / 社会的敗北ストレス / 咬筋 / 侵害応答 / 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 大縫線核 / マウス |
研究実績の概要 |
ストレスは不快情動を生成し、顎顔面部の痛みを増大させる。いずれも脳機能の変調を基盤とする。一方、社会生活を営む上で、ストレスは日常的な状態である。よってストレス誘発痛を軽減するためには、生活習慣レベルでのストレス管理が必要である。トレッドミルなどを用いた、エアロビックな全身運動は、その簡便さに加え、変調した脳機能の調整効果を持つことから、ストレス誘発痛の軽減に応用できる。本研究では、ストレスによる不快情動の生成を、ストレス誘発痛の脳内トリガーととらえる。そしてラットを用いたストレスモデルを用い、以下の2点を解明する。① 不快情動の生成中枢である報酬系の機能変調が、 痛みの脳内調節機構である下行性疼痛制御系に可塑的な変化をもたらし、痛みを増大させるメカニズム、② 変調した報酬系―下行性疼痛制御系に対し、トレッドミルを用いた運動療法の介入メカニズム、である。本課題は、運動療法が健康増進に有用である根拠を、歯科的なストレス誘発痛の脳メカニズムの解明を通じ、提示できる包括的な研究である。課題の初年度では、以下の進捗状況に記載するとおり、ストレス処置が顎顔面部の痛みの応答に与える影響、および運動療法がストレス誘発痛に与える影響の2点を、主に行動学的に検討した。さらにそれぞれのモデル動物の脳を採取し、ストレス誘発痛に対する運動療法の影響をサポートする分子機構の解明を目指した実験の準備をすすめている。また同時に、本課題では心理ストレスモデルとして社会的敗北ストレス処置を用いるが、過去のレポート同様、ウツ様行動の発現、および運動療法による抗うつ効果についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)社会的敗北ストレスモデル(10日間、10分/日)が咬筋の侵害応答に与える影響について行動学的手法で開始した。社会的敗北ストレスを開始した9日後、強制水泳(10分)を実施し、ウツ様行動を定量した。結果、社会的敗北ストレス処置を繰り返すと、(結果1)ウツ様行動(非水泳時間の延長)が延長していることが明らかになった。10日間のストレス処置を完了した24時間後、つまり 11日目、モデル動物の左側咬筋に2.5%ホルマリンを注射し、咬筋部の疼痛関連行動を定量した。するとストレス処置群では、行動時間が有意に延長することが明らかになった(結果2)。つまり本ストレスプロトコールは、咬筋の痛みを増大させることが示唆できた。 2)1)の結果より、次はトレッドミルを用いた運動(30分、6m/分)を、ストレス処置が完了した15分後、毎日、行い、上述1)にレポートした実験結果の1)と)2)を比較した。結果、結果3)トレッドミル運動はウツ様行動を軽減した(非水泳時間が短縮した)。そして結果2)とくらべ、運動群では、咬筋疼痛関連行動時間が有意に短縮した(結果4)。 以上の結果1-4)より社会的敗北ストレスが引き起こす咬筋痛は、適切な運動療法により軽減できることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究によって、社会的敗北ストレス処置が、咬筋の侵害応答を上昇させることが、ラットだけでなくマウスでも確認できた。よって本年度を含め、今後は、ストレスによる痛み応答の上昇の基盤となる脳神経メカニズムを明らかにすることになる。現在まで、行動実験で利用したモデル動物の脳を摘出し、形態学的実験(免疫組織化学的実験)およびタンパク定量(ウエスタンブロット)による解析を進める準備が完了している。よって計画書にしたがい三叉神経脊髄路核尾側亜核および脳幹部(大縫線核)における、疼痛または心理ストレスに応答するタンパク分子の変動を定量する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験技術の向上に伴い、消耗品の使用が予想より下回ったため。次年度の消耗品として使用する。
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