研究課題/領域番号 |
19K10356
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 丈司 大阪大学, 大学院歯学研究科, 招へい教員 (00403030)
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研究分担者 |
相川 友直 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (00362674)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 唇顎口蓋裂 / 睡眠呼吸障害 / 先天異常 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、口唇裂・口蓋裂患者における睡眠呼吸障害の病態を調査し、顎顔面形態の変化と睡眠呼吸障害の関連を明らかにすることを目的としています。 口唇裂・口蓋裂患者は、顎顔面領域における先天的な組織の欠損や低形成を修正するために、成長過程に合わせて数回の手術を実施しています。特に、言語や咀嚼機能の回復には、上気道を狭窄させて軟口蓋を形成し、組織の欠損や低形成を補完する必要があります。また、手術後の瘢痕拘縮による頭蓋顎顔面、特に上顎骨の成長抑制による上顎劣成長が顕在化し、健常児と比較すると、上気道が狭小化し、鼻腔抵抗が増大して、睡眠呼吸障害が誘発されると考察されています。さらに、小児の睡眠呼吸障害は、行動異常、学業成績低下、身体発達障害、循環器疾患などを誘発することも指摘されていますが、口唇裂・口蓋裂患者に限らず、小児の睡眠呼吸障害に関する調査は少なく、スクリーニング検査も確立されていません。 そこで、睡眠呼吸障害を疑う小児の患者に対して、携帯型モニターの簡易睡眠呼吸検査機器を導入して睡眠検査を継続し、令和5年度は、口蓋裂・小下顎・舌根沈下・上気道閉塞による呼吸障害を呈するRobin Sequenceの小児患者3名、舌根部腫瘍による呼吸障害が疑われた成人患者1名、咽頭弁移植術を予定した鼻咽腔閉鎖機能不全の成人患者2名、Treacher Collins症候群の小児患者1名から検査データを収集し、検証しました。 しかしながら、これまでに蓄積した睡眠検査結果だけでは、睡眠呼吸障害のリスク因子を検証して、新たな知見を発信するにはデータ量が不足しています。そのため、睡眠呼吸障害に関する質問票を用いた疫学調査を実施して、口唇裂・口蓋裂患者の保護者447名から有効な回答を得られましたので、年齢や裂型による睡眠呼吸障害のリスク因子、顎顔面形態との関連性を検討しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度も、睡眠呼吸障害に関する質問票を用いた疫学調査を継続しています。採用している質問票は、令和4年度と変わらず、大阪大学連合小児発達学研究科が開発した「子どもの眠りの質問票」です。 令和4年度から集計すると、口唇裂・口蓋裂患者の保護者447名から有効な回答を得ました。質問項目の中で睡眠呼吸障害に直接関連する、「睡眠時呼吸障害」「夜間中途覚醒」「不眠」「朝の症状」「日中の過度の眠気」について解析したところ、口唇裂患者、口唇顎裂患者、口唇口蓋裂患者の中で、睡眠呼吸障害を有する割合は、ほぼ健常者と同等でしたが、口蓋裂患者は、就学前から睡眠呼吸障害を有する患者の割合が、有意に高い傾向を示しました。また、就学前に比べて、小学生の口唇裂・口蓋裂患者において、睡眠呼吸障害の割合が増えており、年齢の増加に伴い、睡眠呼吸障害のリスクが増加している可能性が示唆されました。先天的な顎顔面形態の異常や幼児期の手術による上顎骨の成長抑制・劣成長が、年齢とともに顕在化するためと考察しており、手術手技や早期の矯正治療の介入による上顎前方牽引や側方拡大の必要性を感じました。次年度以降も、質問票での疫学調査を継続し、長期に疫学調査を継続できれば、経年的な変化も検証でき、口唇裂・口蓋裂患者の睡眠呼吸障害に関連する有益な知見になると考えています。 令和5年度に実施した睡眠検査では、Robin Sequenceの呼吸障害に対して実施した舌前方牽引手術に対して、呼吸障害の改善が客観的に確認され、一方、呼吸障害のリスクを伴う咽頭弁移植術においては、新たな呼吸障害の誘発が、客観的に否定されました。 しかしながら、令和4年度から継続している質問票による疫学調査と関連させて検証するためには、これまで蓄積した睡眠検査のデータ量では少なく、今後もデータ収集を継続するとともに、疫学調査との関連を検証する予定です。
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今後の研究の推進方策 |
携帯型モニターとして、簡易睡眠呼吸検査機器を用いて、自宅で実施できる簡素化した睡眠検査も導入しましたが、小児に睡眠検査を実施し、有用な検査データを、十分な母数、取得することは難しく、令和5年度までに蓄積した睡眠検査結果だけでは、睡眠呼吸障害のリスク因子を検証して、新たな知見を発信するにはデータ量が不足しています。しかしながら、疾患を特定することで、ある程度の解析が可能と考えている、Robin Sequenceに対する舌前方牽引術の評価に関しては、今後検証する予定です。
当然、今後も、1年間で10例の睡眠検査データの蓄積を目標にしていますが、令和4年度から実施している、睡眠呼吸障害に関する質問票を用いた疫学調査を継続し、年齢、裂型、顎顔面形態によるリスク因子の検証を行い、新たな知見に対して、睡眠検査データによる臨床的な検証を行うことを考えています。まずは、就学前、小学生、青年期の口唇裂・口蓋裂患者の母集団を検証し、年齢や裂型による睡眠呼吸障害のリスク因子、頭部側面X線規格写真を用いて解析した顎顔面形態との関連性を検討する予定です。
これらの疫学調査や睡眠検査データは、大きな母集団として、口唇裂・口蓋裂患者の睡眠呼吸障害に関連する有益な知見になると考えているので、日本口蓋裂学会や日本口腔外科学会で社会・国民に対して発信し、口唇裂・口蓋裂患者を含めた小児の睡眠呼吸障害への啓蒙活動を考えています。また、検証したデータを元に、英語論文の投稿を考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度の研究を誠実に遂行しましたが、やや遅れており、研究費の中で未使用額が生じました。 令和5年度には、携帯用簡易睡眠呼吸検査機器の追加購入を検討していましたが、同時に複数個使用する機会もなく、睡眠呼吸検査に関して、現有の携帯用簡易睡眠呼吸検査機器で正しいデータが集められており、前年度に購入した付属品に関しても、不足や補充が必要なく、追加購入を見送り、諸費用が削減できました。また、疫学調査に関しては、前年度に作成した質問票・アンケート票で対応可能であり、新たな作成・印刷等が必要なく調査を遂行できたため、物品や印刷等の諸費用が削減できました。 今後も、疫学調査や睡眠検査を継続しますが、追加の機器の購入や印刷等は必要なく、データ量を増やすことで、詳細に検証し、研究結果に対する国内ならびに国際発表や英語論文発表における論文校正や投稿費用に充てる予定です。
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