口腔・大腸マイクロバイオーム解析による大腸がんリスク診断および予防概念の創生

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K10361
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 後藤 雄一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00637902)
• 研究分担者: 盛 真一郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (00620519) ; 井戸 章雄 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30291545) ; 喜多 芳昭 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (30570692) ; 杉浦 剛 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (40322292) ; 佐々木 文郷 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (40735297) ; 田辺 寛 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (40814306) [辞退] ; 夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70237577) [辞退] ; 比地岡 浩志 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70305150) ; 原 英二 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80263268) ; 大塚 隆生 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20372766)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: マイクロバイオーム / 大腸がん / 細菌叢 / 真菌叢

研究実績の概要

我々は2019年度より大腸がんにおけるマイクロバイオームが口腔から供給される細菌によって進展する可能性を探索してきた。この口腔内および腸内、特に大腸内の細菌叢の関係を明らかにするため、大腸がん患者の口腔細菌叢と腸内細菌叢を比較することで、真に口腔細菌が大腸がんの原因となっているか確認してきた。大腸がんだけではなく多くのマイクロバイオーム研究では、歯周病原因菌であるFusobacterium属の存在を同定していることが多い。大腸がんでも過去よりFusobacterium属の影響は示唆されてきた。Fusobacterium nucleatum の大腸がん発癌への関与が注目されている中で、我々は先行研究において、大腸がん患者の唾液および便サンプルで共通して、健常者よりも豊富にみられる４菌種を同定した（Colorectal Cancer Patients Have Four Specific Bacterial Species in Oral and Gut Microbiota in Common-A Metagenomic Comparison with Healthy Subjects. Cancers. 2021 Jul 2;13(13):3332.）。それらはF. nucleatum ではない口腔常在菌であり、大腸がん発癌と口腔細菌叢との関係に新たな可能性を示唆するものとなった。このように大腸がんとの関与が疑われる様々な口腔細菌が同定されており、ある１菌種というより複数の菌種が同時に関わり合って発癌に影響していることが考えられる。また、細菌叢はその菌と菌の関連だけではなくその代謝産物を含めたプラークが形成され、バイオフィルムが形成されることが多い。我々はさらに細菌叢だけではなく、真菌叢も細菌叢へ複雑に関与している可能性を考えている。将来的な予防概念の構築を考え、前向きの介入研究に移る前に、さらなるマイクロバイオームの関連を追求するため、現在真菌叢を同一グループにて解析を行っている。今後細菌叢と真菌層がどのようなネットワークを形成し大腸がんへ影響を及ぼすか解明していきたい。

研究成果

• [雑誌論文] Are intratumoral microbiota involved in the progression of intraductal papillary mucinous neoplasms of the pancreas? (2023)
  • 著者名/発表者名: Hozaka Yuto、Oi Hideyuki、Satake Souichi、Uchino Yoshinori、Goto Yuichi、Idichi Tetsuya、Tanoue Kiyonori、Yamasaki Yoichi、Kawasaki Yota、Mataki Yuko、Kurahara Hiroshi、Nakajo Akihiro、Higashi Michiyo、Tanimoto Akihide、Sugiura Tsuyoshi、Ohtsuka Takao
  • 雑誌名: Surgery 巻: 173 ページ: 503～510
  • DOI: 10.1016/j.surg.2022.10.003
  • 査読あり / オープンアクセス