研究実績の概要 |
口腔顎顔面外科領域では悪性腫瘍による骨破壊,現在多くの患者に臨床応用されている歯科用インプラントに伴うインプラント周囲炎など口腔内疾患の多くに骨吸収や骨破壊,骨欠損の疾患が認められる.ゾレドロネートを含めたビスホスホネート製剤に代表される骨吸収抑制剤は全身投与にも関わらず,顎骨壊死や耳鼻咽喉科・頭頚部外科領域での外耳道骨壊死など、限定的な部位でのみ骨壊死を起こすことが分かっているが,発症メカニズムは解明されておらず、確立された治療法もない.またこれまでの臨床経験より,口腔衛生状態が悪く歯周疾患の進行した患者では,顎骨壊死が重症化している可能性が示唆されている.炎症による骨破壊性疾患の一つである、薬剤関連顎骨壊死マウスモデルは以前から報告されているが,薬剤に焦点を当てた研究が殆どである.骨吸収抑制薬は全身投与であるにも関わらず,顎骨のみに病変が生じることからなんらかの炎症を惹起させることが発症に寄与している可能性を考慮し、新たモデルマウスを確立しそれを用いて骨破壊性疾患が生じるメカニズムについて解析を開始している。またある種の薬剤投与により炎症性サイトカインの制御をすることで顎骨壊死の発症を有意に抑制することに成功しており、今後は、この薬剤投与での抑制メカニズムについても解析を行っていきたいと考えている。 また、炎症による骨破壊性疾患として多くの患者が罹患しているインプラント周囲炎がある。インプラント周囲炎をマウス口腔内で再現したモデルの作成にも成功している。現在、そのモデルを使用し解析を継続して行っている。さらに発症機序や治療法の解明を進めていきたいと考えている。また、得られた知見の一部を国内学会等で発表を行っている。
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