研究課題/領域番号 |
19K10366
|
研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
恩田 健志 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30433949)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 口腔扁平苔癬 / 口腔潜在性悪性疾患 / 口腔扁平上皮癌 / 癌化 / バイオマーカー / 発現異常タンパク質 / プロテオーム解析 / 免疫組織化学染色 |
研究実績の概要 |
口腔扁平苔癬は、口腔潜在性悪性疾患に分類されている。その癌化率は、0.4-12.5%とされる。癌化のメカニズムの詳細は不明である。本研究は、これまでに行ってきた口腔扁平上皮癌のバイオマーカーに関する研究を発展させて、口腔扁平苔癬の癌化メカニズムを解明し、口腔扁平苔癬の診断、予後の判定と治療方針の決定、治療方法の開発等、臨床へ応用することが目的であった。 口腔扁平苔癬症例の生検時切除標本を口腔扁平苔癬の確定診断後、5年以上経過観察が可能で、5年間癌化しなかった群(第1グループ(G1))と口腔扁平苔癬の確定診断後、5年以内に同部位から癌化が認められた群(第2グループ(G2))の2グループに分けて、これまでに研究代表者がリストアップしてきた口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補のうちHSP90とAMBPの2種類のターゲット分子についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔扁平苔癬における発現量を解析した。また、G1とG2群におけるそれぞれの発現量と、臨床指標を比較検討した。 正常口腔組織と比較して、G1群のHSP90タンパク質発現量に著変は認められなかったが、G2群の発現量は高発現を示す症例が多い傾向であった。また、口腔扁平上皮癌組織のHSP90発現量は高発現を示す症例が多かった。発現亢進と臨床指標との間に統計学的有意な相関は認められなかった。 一方で、正常口腔組織と比較して、G1群およびG2群のAMBP発現量に著変は認められなかったが、口腔扁平上皮癌組織のAMBP発現量は低発現を示す症例が多かった。HSP90の解析結果からHSP90タンパク質高発現の口腔扁平苔癬は癌化する可能性が示唆された。また、口腔扁平苔癬のAMBP発現低下と癌化との関連が示唆された。今後、候補分子を増やし、また、症例数を増やして継続して解析を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究では、これまでに科研費による研究で、研究代表者がリストアップしてきた口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔扁平苔癬における発現量を解析することにより口腔扁平苔癬の癌化メカニズムを解明することが目的であった。正常口腔組織、口腔扁平苔癬組織、口腔扁平上皮癌組織についてHSP90とAMBPの2種類の候補タンパク質について免疫組織化学染色法によりそれぞれの発現量と発現状態を解析できた。また、それぞれの組織における発現量と、臨床指標を比較検討し、口腔扁平苔癬の癌化に関するリスクファクターの検出を検討できた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、前年度解析した実験内容に引き続き、バイオマーカー候補分子を増やして免疫組織化学染色を行い、生検時の臨床検体を用いた口腔扁平苔癬の予後の判定方法の確立と治療方針の決定方法を樹立することを目指す。また、HSP90およびAMBPについては、正常口腔組織、口腔扁平苔癬組織、口腔扁平上皮癌組織に対して施行した免疫組織化学染色法の症例数を増やして検証を行っていく予定である。 その他、今年度からは、5年間癌化しなかった口腔扁平苔癬(G1)と5年以内に同部位から癌化が認められた群(G2A)を蛍光標識二次元電気泳動法(2D-DIGE)を用いて網羅的にタンパク質発現解析を行い、口腔扁平苔癬の癌化メカニズムを分子レベルで解明し、口腔扁平苔癬の診断、予後の判定と治療方針の決定、治療方法の開発等、臨床応用への発展を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は、これまでに科研費による研究で、研究代表者がリストアップしてきた 167種類の口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補の中から、いくつかの候補分子を絞って、モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔扁平苔癬における発現量を解析する予定であった。正常組織、口腔扁平苔癬組織、口腔扁平上皮癌組織における抗体の条件設定に時間を要し、本年度はHSP90とAMBPの2種類のバイオマーカー候補の発現解析を施行するに留まった。 令和2年度は、前年度解析した実験内容に引き続き、バイオマーカー候補分子の種類を増やして免疫組織化学染色を行い、生検時の臨床検体を用いた口腔扁平苔癬の予後の判定方法の確立と治療方針の決定方法を樹立することを目指す。また、HSP90およびAMBPについては、正常口腔組織、口腔扁平苔癬組織、口腔扁平上皮癌組織に対して施行した免疫組織化学染色法の症例数を増やして検証を行っていく予定である。
|