研究課題
口腔扁平苔癬(OL)は口腔潜在性悪性疾患に分類される癌の発生リスクを有する臨床的状態である。その癌化率は0.4-12.5%である。OLの癌化メカニズムは解明されておらず、経過観察でよいのか、切除すべきか、その治療方針に根拠を示せない現状がある。確定診断のための生検時に採取した組織を用いて、早期に癌化するか否かを判定することができれば、癌化する可能性が高い症例は積極的に早期に切除し、発癌を未然に防止できる可能性がある。これまでに研究代表者は口腔扁平上皮癌(OSCC)のプロテオーム解析を行いOSCC細胞が発現異常を示すタンパク質群(AP)をリストアップしてきた。本研究はOLにおけるAPの発現状態を解析し、OLの癌化メカニズムを解明することで、診断、予後の判定、治療方針、治療法の開発等へ貢献することを目的とした。OL症例の検体をOLの確定診断後、5年以上経過観察が可能で5年間癌化しなかった群(G1)とOLの確定診断後、5年以内に同部位から癌化が認められた群(G2)の2群に分けてAPの免疫組織化学染色を行い、OLにおける発現量を解析した。研究期間中にOSCCで発現が亢進しているHSP90、Transketolase、Ezrin、PDE5と発現が低下しているAMBP、Caspase-3、Annexin A1、SIRT1の計8種類のAPについて解析を行った。正常口腔組織と比較して、G1群のタンパク質発現量に著変は認められなかったが、G2群の発現量に異常を示すAPや、G1群およびG2群のタンパク質発現量に著変は認められなかったが、癌化後に発現量が異常を示す傾向のあるAPが存在することが確認され、OLの癌化に関与している可能性が示唆された。さらなる解析が必要ではあるが、これらAPの発現状態を生検時に採取した組織を用いて測定することで、根拠あるOLの治療方針を選択できる可能性が期待される。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 12件)
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