舌痛症は、舌に疼痛を主徴とする慢性疼痛疾患である。本疾患は口腔に器質的疾患が認めらないにもかかわらず口腔(舌、口蓋、口唇など)に灼熱感を伴った慢性疼痛を主症状とし、慢性的な経過を取り患者のQOLを低下させている。また、器質的疾患は無いにも関わらず、口腔に灼熱感様疼痛が見られ、疼痛の発症する原因が不明であった。最近の研究では、更年期の女性に多発していることから、女性ホルモンが関与しているとの報告もある。また、舌痛症は疼痛に対する認知情動系が疼痛の認知機構を修飾し疼痛の認知に影響を与え、疼痛の強度が上昇するという病態の形成に関わっていると報告されている。 近年、脳画像解析が発展し、脳機能が解明されつつある。最新の知見では、脳が何も活動していないとされる基底状態default mode network(DMN)と疼痛認識の関連性が研究されている。さらに、脳画像解析の手法を応用した脳体積変化の手法も開発され、慢性痛患者の脳体積の変化が見られることが報告されている。 今回、これらの所見に加え、舌痛症の脳の基底状態をMRIにて撮像し、脳のdefault mode network(DMN)についても健常者との比較検討を行い舌痛症の特異的脳活動と脳内のネットワークの変化を検討した。 舌痛症の疼痛修飾機構に関して、健常者と比較して脳の基底状態の変化が認められれば、舌痛症特有の疼痛反応の解明の糸口になる。舌痛症の治療に関して、疼痛を除去するには、原因の解明が必要である。これらの研究から舌痛症特有の疼痛修飾機構が解明されると考えられる。
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