研究実績の概要 |
成長発育に伴う脳サイズの増大は、知能・感情・認知記憶などを司る脳活動の質を決定する重要な因子である。研究分担者である岡澤らは、脳サイズ調節の分子メカニズムを解明するため、ポリグルタミン病結合タンパクとして、岡澤ら自身が発見した新規分子 Polyglutamine binding protein 1 (PQBP1)を操作したPQBP1欠損小頭症マウスを作成し、1) 脳サイズの新規調節機構の発見、2) PQBP1異常症の発症メカニズムの解明、さらには3) PQBP1異常症に対する遺伝子治療への道筋を示した。当初、PQBP1欠損の影響は、脳サイズおよび機能に限局されると考えられていた。しかし、低身長も認められたため全身の骨代謝に対する影響も示唆されたが、そのメカニズムは未だ不明である。そこで本研究では、PQBP1欠損が骨代謝に与える影響およびその分子メカニズムを解明する。
生後4週齢雄性Nes-cre XFloxY(PQBP1-cKO)マウス(各n=4)を実験群とし、XY・XFloxY・Nes-Cre XYマウス(各n=4)を対照群とする。全群において、生後4週齢から2週間毎3DmicroCTを用いて大腿骨・脛骨を撮像し経時的形態変化を評価する。次に全群において生後10週齢(屠殺日)になる4日と1日前にカルセインを皮下投与する。各計測部位の骨形態および骨梁構造を解析する。また、TRI/3D-BONで骨の三次元構造を再構築し、形態的変化を観察する。軟X線を用いて頭部と下肢の全体的骨構造を撮像する。大腿骨・脛骨を摘出しRT-PCRによる骨の生化学的評価する。固定した左脛骨をGMA樹脂包埋し、矢状断非脱灰連続切片を作製し、ALP, TRAP染色を行う。固定した左大腿骨を脱灰パラフィン包埋し、矢状断(膝関節)の連続切片を作製する。HE, TRAP, Safranin-O染色を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pqbp1-cKOマウスは頭蓋骨、全長、幅、高さともに減少した。また骨密度が低下した。骨芽細胞の分化及び機能が阻害された。また分化マーカALPL、SP7、COL1A1及びBglapが低下した。よって骨芽細胞の機能及び分化が低下した。また軟骨の発達が低下し、成長板が薄くなった。Sox9、COL2A1がダウンレギュレーションした。破骨細胞の機能、分化には影響がなかった。Nfatc1には有意差が認められなかった。Tnfrsf11bは有意に減少し、RANKLは有意差が認められなかった。 2019年度の結果はすでに、 PQBP1, an intellectual disability causative gene, affects bone development and growth. Yang SS, Ishida T*, Fujita K, Nakai Y, Ono T, Okazawa H.Biochem Biophys Res Commun. 2020 Mar 19;523(4):894-899. doi: 10.1016/j.bbrc.2019.12.097. Epub 2020 Jan 18. に掲載済みであるが、当初の予定より遅れている。
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