研究実績の概要 |
令和元年度、2年度の実績として、I型インターフェロン(IFN)の機能亢進による全身性骨形成不全の発生機序を解明するため、Singleton-Merten Syndrome (SMS)患者および対照群となる健常患者の抜去歯から間葉系幹細胞を単離し、単離した間葉系幹細胞にI型IFNのリコンビナントプロテイン(IFN-alfa-2a, IFN-alfa-2b, IFN-beta)を添加した状態で骨芽細胞への分化を試みた。どちらの実験系でもI型IFNが亢進している群(SMS群、リコンビナントタンパク添加群)において、重度の骨芽細胞への分化抑制が認められ、さらにこの骨芽細胞への分化抑制は特にIFN-betaにおいて著しいことが分かった。I型IFN受容体がJAK1, JAK2と結合することからJAK/STAT経路に着目し、研究を進めた。この結果、非常に興味深いことにI型IFNが亢進している群(SMS群、リコンビナントタンパク添加群)にJAK1/JAK2選択的阻害薬を添加した場合、骨芽細胞への分化抑制を有意に改善できることがわかった。さらに、骨芽細胞分化培地中で培養した間葉系幹細胞のタンパクを抽出し、ウエスタンブロッティング法を用いて、MLKLのリン酸化を観察した結果、I型IFN亢進群ではリン酸化MLKLが有意に亢進し、ネクロトーシスの状態に陥っていることが示唆された。 令和3年度の実績として、siRNAを用いて、SMS群におけるJAK/STAT経路を阻害した結果、I型IFNの亢進によるフェノタイプを改善することができた。さらに、アポトーシスとネクロトーシスを区別することのできる、PI染色を行なった結果、SMS群では、ネクロトーシスを中心とした細胞死が起こっていることが確認できた。最終年度である令和4年度の実績としては、これらの結果を纏め学術雑誌に投稿した。
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