研究課題
研究を開始するにあたり、一時期の新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴う手術の延期や患者の同意拒否が続き、さらに睡眠誘導時のMRI撮影は患者同意の取得が困難であったため、覚醒時における下顎骨後方移動術前後のkinetic MRIおよびvolumetric MRIを用いて術前後の上気道形態の変化を観察し、下顎骨の後方移動量と上気道の容量との関連を解明することとした。現在まで14名の同意を取得でき、術後のMRIの撮影が終了している。なお、すべての患者において術後に睡眠時呼吸障害の自覚症状は表れていなかった。これまでに得られたデータから、kinetic MRIによる上気道矢状面の60秒間の動的評価およびvolumetric MRIによる上気道容積評価を行った。その結果、8mm程度の下顎骨後方移動術を行った場合、口蓋垂部の後咽頭壁までの前後的距離を除き、正中矢状面での上気道面積および距離に大きな変化は認められなかった。一方で、軟口蓋後方気道領域容積は48%程度、舌根部後方気道領域容積においては39%程度の減少を認めた。また、最狭窄した表面積は51%程度も減少していた。このことから、下顎骨後方移動術を施行することで咽頭部の水平方向の狭窄が生じている可能性が示唆され、従来の矢状方向に着目した分析方法では詳細を明らかにすることが困難である可能性が示唆された。今後、本研究で得られたデータを詳細に解析、統計処理し、日本矯正歯科学会および国際学会に発表、論文投稿を行う。