研究課題
基盤研究(C)
kinetic MRIおよびvolumetric MRIによる上気道評価を行った結果、8mm程度の下顎骨後方移動術を行った場合、口蓋垂部の後咽頭壁までの前後的距離を除き、正中矢状面での上気道面積および距離に大きな変化は認められなかった。一方で、60秒間のkinetic MRI撮影中において上気道面積は25%程度のばらつきを認め、静的な評価の困難さが示された。体積評価においては、軟口蓋後方気道領域容積は48%程度、舌根部後方気道領域容積においては39%程度の減少を認めた。これらのことから、下顎骨後方移動術によって咽頭部の水平方向の狭窄が生じている可能性が示唆された。
歯科矯正学
わが国における顎変形症患者の約7割は骨格性下顎前突症であり、この改善のため下顎骨後方移動術が行われている。しかしながら、これによる上気道および睡眠呼吸状態への影響は未だ明らかになっておらず、安全な施術基準の確立のためにはその因果関係を明らかにすることが望ましい。本研究結果では下顎骨の後方移動に伴う上気道の狭小化が認められたものの、睡眠呼吸障害のような臨床所見につながる結果ではなかった。被験者のBMIなど個体差による影響を調査するために今後のさらなる研究が必要である。