研究課題/領域番号 |
19K10391
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
郡司掛 香織 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90448811)
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研究分担者 |
川元 龍夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50323704)
志賀 百年 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20596134) [辞退]
黒石 加代子 (中尾加代子) 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60468303)
左合 美紗 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40815825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 痛み / VNUT / ATP |
研究実績の概要 |
歯科矯正治療時の歯の移動に伴う痛みはほぼ全ての患者が感じるため重要な問題である。この痛みの発生機序について、歯髄と歯根膜を介して痛みが発生すると考えられる。本研究では、近年神経伝達物質として注目されているアデノシン三リン酸(ATP)に焦点を当て、矯正歯科治療時の疼痛発生機構を解明することを目的とする。 歯根膜を介した痛みの発生について、培養ヒト歯根膜細胞(HPDL細胞)にメカニカルストレスとして遠心力を付与したところ、細胞外へのATPの放出が増加し、定量的RT-PCRより細胞外へのATP放出に関与するVNUT(小胞型ヌクレオチドトランスポーター)の発現も増加した。HPDL細胞にVNUT阻害薬であるクロドロネートを培養液に添加して遠心力を付与したところ、ATPの放出が抑制された。また、雄性Wistar系ラットの第一臼歯にクローズドコイルスプリングを用いて矯正力を付与したところ、疼痛行動であるラビング行動とワイピング行動が有意に増加したが、クロドロネートを静脈内投与したところ、疼痛行動がコントロールレベルと同程度になった。これらの結果から矯正歯科治療による歯根膜を介した痛みの発現にはVNUTを介したATPの細胞外への放出が関係していることが示された。 歯髄を介した痛みの発生について、矯正歯科治療に伴う便宜抜歯された歯から歯髄を取り出し培養してヒト歯髄細胞として実験をおこなった。矯正歯科治療時には歯髄内が低酸素状態になることが以前の研究で明らかとなっているため、培養ヒト歯髄細胞を脱酸素剤を用いて培養し、VNUTの発現をRT-PCRとWestern blot法で確認したところ、VNUTの発現が減少した。この結果から歯髄を介した矯正治療時の歯の痛みはVNUTの関連が少ないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト歯髄細胞の培養が確立し、in vitroの実験が進み始めたが、想定と異なる結果が示され、研究の方向性を検討する必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
低酸素状態下で培養したときのATPの細胞外放出量を確認する。ATPの放出が増加しているならば、VNUTではなくコネキシン43(ギャップ結合を形成する膜貫通タンパク)、パネキシン1(大きな孔のATP放出チャネルを形成するタンパク)の関与を検討する。ATPの関与が認められない場合は他の神経伝達物質を検討する。 in vivoでは、in vitroで関係の認められたものについて、ラット第一臼歯に矯正力を付与した時の歯髄細胞における発現、局在を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により参加予定の学会が中止となったため旅費を使用しなかったため。
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