研究課題/領域番号 |
19K10392
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
川元 龍夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50323704)
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研究分担者 |
志賀 百年 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20596134) [辞退]
郡司掛 香織 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90448811)
黒石 加代子 (中尾加代子) 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60468303)
左合 美紗 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40815825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顎下腺 / Apert症候群 / FGFシグナル / 分枝形態形成 |
研究実績の概要 |
Apert症候群は、線維芽細胞増殖因子Ⅱ型受容体(FGFR2)のリガンド(FGF)依存的機能亢進型変異(S252WまたはP253R)を原因とする先天性疾患である。Apert症候群患者は唾液量が増加していることが臨床所見より得られており、先行研究では生後1日目のApert症候群モデルマウスの顎下腺の過形成を示す所見が示唆された。 本研究は、Apert症候群モデルマウス及び組織特異的にApert症候群型変異を発現するコンディショナルノックインマウスを用いて顎下腺の形態・機能分析を行い、顎下腺の発生における上皮間葉相互作用のメカニズムやFGFR2のシグナル亢進が顎下腺に及ぼす形態的・機能的影響を検索することを目的とする。本研究によりApert型変異による顎下腺形成の亢進、唾液量増大が生じるメカニズムが明らかになることで、Apert症候群の病態解明だけでなく、口腔乾燥症に対する新規治療ターゲットを見出す一助となることが期待される。 現在まで、顎下腺の発生が開始する胎生期のApert症候群モデルマウスの顎下腺の形態評価を行っている。将来唾液の分泌が行われる導管内に管腔が形成される胎齢15.5日の顎下腺の形態評価を行ったところ、対照群のマウスと比較して実質の過形成が生じていることが明らかとなった。また、胎齢15.5日のApert症候群モデルマウスの顎下腺においてFGFR1やアポトーシス細胞の高発現が生じていることも示唆された。今後はApert症候群モデルマウスの顎下腺において胎齢13.5日などさらに早期の時点における顎下腺の形態評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年に本学の動物実験施設の遺伝子組み換え動物実験室内で発生したウイルス感染により約1年間研究を中断したことで当初予定していたコンディショナルノックアウトマウス作成に至っておらずやや遅れているとの評価となった。 胎生期におけるApert症候群モデルマウスの顎下腺の形態評価は概ね順調に進んでおり、胎齢15.5日で実質の過形成が生じていることを明らかにした。また、顎下腺の発生及びFGFR2シグナルに関与する因子のmRNA、タンパク発現量を調べたところApert症候群モデルマウスの顎下腺ではFGFR1や実質周囲におけるアポトーシス細胞の高発現が生じていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、Apert症候群モデルマウスの胎齢13日に焦点を当てていく。胎齢13日は顎下腺の腺房や導管の内腔形成が行われる時期であるため、顎下腺の形態、遺伝子やタンパクの発現、細胞増殖やアポトーシスを解析することによりApert症候群モデルマウスにおける顎下腺の形成を解明していく。その後は成体マウスを用いて顎下腺の形態評価や唾液分泌量の測定を行う予定であるが、Apert症候群モデルマウスは約6割が生後28日までに死亡することが報告されている。Apert症候群モデルマウスの飼育を試み、困難である場合は顎下腺上皮または間葉特異的にApert型変異を有するコンディショナルマウスを作出しFgfr2シグナル亢進が顎下腺の形態や機能に与える影響を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延により今年度参加予定であった学会等がオンライン開催になったことにより当初使用が見込まれていた旅費の使用がなくなったため。
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