研究課題/領域番号 |
19K10395
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中村 美どり 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (90278177)
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研究分担者 |
中村 浩志 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00278178)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
大須賀 直人 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (80247535)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (90302893)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スクレロスチン / 骨誘導因子(BMP) / 骨細胞 / 軟骨細胞 / 骨芽細胞 / 異所性骨 / 成長発育 / 石灰化 |
研究実績の概要 |
骨組織における骨細胞の役割は永年不明であったが、近年、骨細胞はスクレロスチンというタンパク質を特異的に分泌していることが発見され、スクレロスチンには骨形成抑制作用があることが報告された。骨誘導因子Bone Morphogenetic Protein (BMP)は、骨基質中に存在し、異所性骨形成を誘導するタンパク質である。そこで、リコンビナントBMP-2誘導性異所性骨におけるスクレロスチンの発現を解析した。BMP-2を浸漬したコラーゲンペレットを生後7週齢雄のC57BL/6マウスの右側大腿部内側の筋膜下に移植し、誘導された異所性骨を採取した。BMP埋入後10日で回収した異所性骨では、マイクロCTにおいて、BMPペレット外周に石灰化像を認めた。組織学的解析では軟骨様組織と骨様組織を認めた。ALP陽性の骨芽細胞と共に、トルイジンブルー染色で認識される軟骨基質中に多数の軟骨細胞を認めた。抗スクレロスチン抗体を用いた免疫染色では、軟骨細胞においてスクレロスチンの発現を認め、骨様組織中にもスクレロスチン陽性骨細胞の出現を認めた.BMP埋入後2週間で回収した異所性骨ではマイクロCTにおいて、BMPペレットを完全に取り囲む多孔質な石灰化像を認めた。組織学的解析では、埋入後10日で認められた軟骨様組織はほぼ消失し、骨様組織が占めていた。ALP染色では、骨芽細胞と軟骨細胞で陽性を示した。また、多孔質な石灰化組織に存在する骨細胞において、スクレロスチン発現が強く認められた。これらの骨細胞は、骨細胞の特異形質であるDentin matrix protein-1 (DMP-1) とFibroblast growth factor-23 (FGF-23) の発現が認められた。以上の結果より、BMP誘導性異所性骨において、骨細胞および軟骨細胞において、スクレロスチンの発現が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMP誘導性異所性骨における骨細胞においてスクレロスチン発現が認められると共に、軟骨細胞においてもスクレロスチンの発現を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)骨組織における骨形成抑制因子スクレロスチンの発現と発現制御の解析 正常マウスに対してメカニカルストレス、副甲状腺ホルモン(PTH)、gp130介在サイトカインのようなスクレロスチン発現を抑制するような刺激を与えた際の骨形成に対する効果を検討する。つまり、骨形成促進に働く信号として「スクレロスチン発現抑制機構」を明らかにする。 (2)異所性骨形成モデルにおけるスクレロスチンの発現に関する解析 正常マウス、骨粗鬆症を呈するOPG欠損マウス、大理石骨病を呈するop/opマウスにおける異所性骨形成に対して、全身的にメカニカルストレス刺激やPTH投与を行い、異所性骨と実際の骨組織におけるスクレロスチン発現制御の違いとその生理的役割について明らかにする。 (3)スクレロスチン遺伝子発現のin vivoモニター解析 スクレロスチンSost遺伝子の発現をin vivoでモニターするために、Sost遺伝子のプロモーターの制御下でGFP遺伝子を発現する遺伝子挿入マウス (Sost-GFP KIマウス)を作製した。Sost遺伝子は骨細胞で特異的に発現していることより、通常の骨組織においては皮質骨や海綿骨に埋入している骨細胞がGFPを強く発現することが示唆される。これまでは、組織切片を作成して、in situ ハイブリダイゼーション法や免疫染色法で、遺伝子やタンパク質の発現を定性的に検出するしか方法が無かった。本研究で作成するSost-GFP KIマウスを用いることで、骨組織におけるSostの発現をGFPの蛍光強度を用いて定量的に測定することが出来る。マウス頭蓋冠に対してRANKLやPTHを投与することやメカニカルストレス負荷による骨吸収や骨形成の促進作用が、骨細胞のスクレロスチン発現とどのように関連しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)スクレロスチン遺伝子発現のin vivoモニター解析実験が遅延したため。 (使用計画)上記実験を早急に開始する予定である。
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