幼少期に身体抑制を経験したラットはストレス反応性が亢進する。本研究の目的は幼少期に身体抑制を経験したラットは生活環境を整えることでストレス反応性を緩和できるかを検証することである。本研究では以下の3つの実験群を作成し、2019年度~2022年度で実験(1~6)そして2023年度に実験7、8を行った。・実験群:生後1週齢時に1日1回30分の身体抑制を7回行い、続けて次の1週間、広く遊具を設置した良好な環境で飼育し、その後、各ラット毎のケージで飼育した群。・対照群1:生後1週齢時に1日1回30分の身体抑制を7回行った後、各ラット毎のケージで飼育した群。・対照群2:身体抑制を一切経験しない群。実験1~6 環境を良好に整えることにより、成長後のHPA axisのストレス反応性亢進は減少し、視床下部室傍核カテコールアミン代謝回転及びCRH産生機能も低かった。また成長後の大脳辺縁系扁桃体グルココルチコイドレセプター発現量が高かった。良好な環境下でのラットは成長後の明期(睡眠)と暗期(摂食行動)が明瞭に区別されており、生活リズムを司る時計遺伝子の日中と夜間の発現量の差が大きかった。さらに良好な環境は無動行動の割合を増加させた。実験7と8.環境を良好に整えることによって、不安関連行動の行動距離および区画移動数ともに、対照群2,実験群、対照群1の順で、大きかった。また空間・記憶行動においても「正選択の割合」や「参照記憶」ともに、対照群2,実験群、対照群1の順で、大きかった。以上の結果より、遊具設置など生活環境を良好に整えることで、成長後のストレス反応性亢進を緩和できることが示唆された。
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