研究課題/領域番号 |
19K10398
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
東堀 紀尚 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (50585221)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エピジェネティック / 口蓋裂 / ヒストンメチル化酵素 / 顎顔面発生 |
研究実績の概要 |
口唇裂・口蓋裂は、600人に一人と高頻度に認められる先天異常疾患である。遺伝的要因と環境要因との相互作用によって発症する多因子疾患であるが、発症メ カニズムは未だ不明な点が多い。近年、エピジェネティックな変化が疾患の発症要因になっていることが報告されているが、口唇裂・口蓋裂を始めとした顎顔面 領域における先天異常疾患とエピジェネティックな変化についての報告は少ない。本研究は、神経堤細胞にのみヒストンメチル化酵素Setdb1をノックアウトさせ、口蓋裂を発症させたマウスを実験モデル(Setdb1 CKO) として用い、特に口蓋におけるSetdb1を中心としたエピジェネティックな遺伝子制御メカニズムについて研究を進めている。 当該年度は、Setdb1のターゲット遺伝子の同定を中心に行った。行った研究は以下の3点である。2) 口蓋由来の間葉細胞にSetdb1をknockdownさせ、口蓋発生に重要な遺伝子群の変化を検討する、3)軟骨細胞にも表現型があるため、軟骨細胞においてPTHrPレセプターを介したSetdb1による細胞増殖制御について検討する。 2) siRNAを口蓋由来の間葉細胞にト ランスフェクションしSetdb1をknockdownさせRNAを抽出後、qPCRにて口蓋発生に重要な遺伝子群の変化を検討した。変化があった遺伝子に対しては、in situ hybridization法にて確認を行なった。3)軟骨細胞ATDC5にSetdb1をノックダウンさせたところ、増殖能が上昇するに伴い、PTHrPレセプターの発現が上昇した。この変化は、Aktのリン酸化が少なくとも必要であることがわかった。in vivoにてもSetdb1 CKOのメッケル軟骨にてPTHrPレセプターの減少と共に増殖能の増加を認めた。 以上の内容を国際誌(2編)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りSetdb1のターゲット候補遺伝子の同定ができ、概ね順調に進んでいると考えられる。また、他の細胞にてのSetdb1の役割についての解析も進み、両内容について国際誌へ報告が完了したことからも、このような判断となった。
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今後の研究の推進方策 |
同定された遺伝子が直接Setdb1に制御されているかどうかの検討をクロマチン免疫沈降法およびルシフェレースアッセイを用いて検討を行う予定である。申請者は、過去に同様の実験用いた研究内容を発表した経歴を持つため、順調に進むものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言により研究活動に制限がかかった。繁殖等も最小限に抑えたため、研究の進捗に大きな影響が出た。 SETDB1のターゲット遺伝子の候補に対する詳細な制御メカニズム解明のために必要な試薬の購入、マウスの飼育費として次年度使用額生じた助成金を使用する予定である。
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