研究課題
骨同士を結合する線維性組織である縫合は、頭蓋顎顔面骨格成長の場として重要な役割を果たす。成長期において頭蓋骨骨断端に骨添加と同時に、脳の成長に応じて骨表面における骨吸収・骨形成があいまって、頭蓋内容積を増大させるように頭蓋骨は外側へと位置を変化させる。胎生期を含め成長期以前の早期に、縫合部の早期癒合を発症する頭蓋骨縫合早期癒合症(craniosynostosis、以下Cs)患者においては、これら機能は著しく阻害され、骨格性下顎前突、開咬、重度の叢生等の発症が惹起される。このように、Csの病態は矯正歯科臨床と深く関わり、当該疾患患者に対する歯科矯正治療には健康保険が適用されているが、これら患者の形態・機能・審美の改善には外科的矯正治療が必要となる場合も多く、非侵襲的かつ病態成立機構に根ざした治療法の確立が世界的に強く期待されている生体内のあらゆる細胞が分泌し血中を循環するナノ分泌顆粒をエクソソームと呼ぶ。癌をはじめとする様々な疾患のバイオマーカーとして注目を集める一方、生体に備わった分子輸送機構であり、新規ドラッグデリバリーシステム(DDS)の候補とされている。様々な核酸医薬のなかでも、低分子干渉RNA(siRNA)は標的配列に高い特異性を示すが、生体内での安定性が低く創薬研究が進まなかったが、2018年に世界初のPEGリポソーム輸送型siRNA医薬品が米国FDAで承認された。一方、頭蓋骨縫合癒合症を主徴とするアペール症候群は、FGFR2の機能獲得型点突然変異によるアミノ酸置換により発症する。本研究は、アペール症候群モデルマウス点変異特異的siRNAをエクソソームにより輸送し、マウス頭蓋顎顔面縫合発生に対する影響をin vitroおよびin vivoにて解析することを目的とした。得られる結果は、広く先天性疾患を対象としたsiRNA創薬の発展へと波及することが期待される。
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