研究課題/領域番号 |
19K10405
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
植田 紘貴 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10583445)
|
研究分担者 |
石原 嘉人 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (70549881)
亀田 雅博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50586427)
内部 健太 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (20584618)
上岡 寛 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80253219)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 迷走神経刺激 / 顎口腔機能 / 組織血流量 |
研究実績の概要 |
迷走神経は副交感性の自律神経を構成する第X脳神経であり、各臓器に分布し自律性調節を行う。迷走神経は代表的な副交感神経の一つであり、頸部・腹部の各臓器に分布し、遠心性線維は運動神経として消化管運動の制御や、求心性線維は知覚神経として内臓感覚の中枢への伝達を行う。研究代表者は、これまで麻酔下のラットを対象とした急性実験で、左側頸部の迷走神経の電気刺激が唾液分泌を促進することを過去に報告した。しかし、迷走神経刺激と唾液腺組織血流量との関連については、いまだ明らかではない。 本研究では、迷走神経刺激が唾液腺の分泌機能を促進する知見を発展応用し、自律神経系の副交感神経が骨形成の促進に関与する因子の一つであることに着目し、各末梢器官の組織血流量を評価項目として検討を行った。 令和2年度は、副交感神経の支配下にある末梢器官である骨膜の組織血流量の測定を行った。吸入麻酔下の雄性ラットを対象に、左側大腿骨の骨膜を剖出した後、左側迷走神経を頸部で切断し、迷走神経刺激を行った。同様に、唾液腺の組織血流量に関して、吸入麻酔下の雄性ラットの左側顎下腺および左側咬筋を剖出した後、左側迷走神経を頸部で切断し、ムスカリン受容体のアゴニストであるピロカルピンを腹腔内投与し、投与前後の唾液腺組織血流量を計測した。同様に、迷走神経中枢端の求心性線維を電気刺激した場合の唾液腺組織血流量を計測し、唾液腺組織血流量の変化を比較検討した。 その結果、ムスカリン受容体のアゴニストであるピロカルピンの腹腔内投与は唾液腺の組織血流量を増加した。さらに、迷走神経求心性線維の刺激は、同様に唾液腺組織血流量を増加した。迷走神経刺激はムスカリン受容体を介して唾液腺組織血流量が一過性に増加し、唾液分泌量を増加することが示唆された。また、迷走神経刺激が骨膜の組織血流量に影響を及ぼすことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、吸入麻酔下の雄性ラットを対象に、左側顎下腺および左側咬筋を剖出した後、左側迷走神経を頸部で切断し、迷走神経の求心性線維の電気刺激前後の唾液腺組織血流量と咬筋の組織血流量を記録した。その結果、迷走神経求心性線維の電気刺激は、唾液腺の組織血流量の増加を促進した。また、ピロカルピンの腹腔内投与は唾液腺の組織血流量の増加を促進した。迷走神経刺激による唾液分泌の促進機序に関して、ピロカルピンはムスカリン様受容体のM1受容体であり、唾液腺に分布することから、ムスカリン様受容体を介して、迷走神経刺激が唾液線の組織血流量に影響を及ぼすことが示唆された。また、迷走神経刺激により、迷走神経刺激が骨膜の組織血流量に影響を及ぼすことが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の結果、ムスカリン様受容体のアゴニストであるピロカルピンが唾液線の組織血流量に影響を及ぼすことが示唆された。今後、迷走神経刺激が骨膜の組織血流量に影響を及ぼす生理的機序や意義について検討を行う計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による緊急事態宣言の発出により、消耗品の購入計画に差異を生じたため、使用計画としては、次年度、迷走神経刺激前後の血流量の解析に必要な物品費等に充当する。
|
備考 |
https://soran.cc.okayama-u.ac.jp/html/ffb4e65e9913defa74506e4da22f6611_ja.html
|