エナメル質の脱灰抑制や再石灰化促進作用を発揮する機能性材料の開発が望まれている。生体におけるエナメル質の形成では、ミネラル成分の存在に加え基質タンパクが結晶の形成と成長に重要な役割を果すことが知られている。本研究では、バイオアクティブガラス(BGnp)と酸化亜鉛の混合ナノ粒子を創製し、エナメル質の再石灰化およびう蝕原性細菌に対する抗菌効果を調べた。加えて、オリゴペプチドを創製し、それらの形態、構造、表面特性を調べ、ペプチドとBGnpの複合化を試みた。 作製したBGnpは、ナノ粒子化による非常に大きな比表面積、表面電化による中等度の分散安定性を示し、速やかな酸緩衝能を有することが確認された。再石灰化試験では、脱灰エナメル質の有意な機械的特性の改善、電子顕微鏡(SEM)像により脱灰エナメル質表面が石灰化物様の構造物で覆われているのが確認された。また、酸化亜鉛含有ナノ粒子では広範囲にわたる抗菌スペクトルを確認した。 グリシン、プロライン、ピリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸をベースとするフォルダマーを分子モデリングソフトウェアで設計し、溶液中で合成した。合成したフォルダマーは、カルボキシル基末端とアミノ基末端におけるイオン相互作用により、アパタイト形成において効果的な相互作用を示した。BGnpの表面に対しアデノシン三リン酸によりフォルダマーを固定化し、BGnpとフォルダマーの複合体を合成した。この複合化がBGnpの酸緩衝能には影響しないことを確認し、エナメル質再石灰化のための機能性を発揮することが考えられた。
|