これまで、歯の移動時に生じる疼痛緩和を目的とし、矯正力に由来する疼痛強度を定量評価可能な動物モデルを確立し、その妥当性の評価を行いつつ歯の移動に伴う疼痛に関与する受容体機構の検討を行ってきた。本申請では、研究を更に進め、本動物実験モデルを用い新規疼痛管理薬物・方法の探索ならびに侵害受容機構の変化を明らかにすることを目的とした。また、将来的には臨床応用を可能とするために、ヒトを対象とした疼痛、神経麻痺の定量評価を平行し研究を進めてきた。研究実地計画としては、新規治療薬・方法の探索、薬物投与とLLLTの適切な投与量とスケジュールを開口反射活性の変化を指標として決定し、それらの処置をおこなったラットの歯の移動量、破骨細胞浸潤、三叉神経節活性、炎症性サイトカインなどの変化と併せて最大7日間の評価を予定した。研究は順調に進行し、「薬物投与」:TRPV1拮抗薬の歯肉構内局所投与の、鎮痛効果と好ましくない副作用(発熱など)の発現に関しても併せて検討した。「歯の移動量」:実験前後の上顎精密印象採得から模型を用いて矯正歯の移動量を精密に二重盲験法で測定した。研究の成果としては、2020年に継続して行ってきたこれらの実験内容で、共同研究者の論Tsuchiya et al. Front Neurol. 2020 doi: 10.3389が受理された。加え、本研究の臨床応用に向け、下顎骨に対する手術を施行した患者に対し、オトガイ神経麻痺の程度をSemmes Weinstein知覚計を用いて調査している。治療例は、2021年11月に開催される日本矯正歯科学会、ならびにKorean Association of Maxillofacial Plastic and Reconstructive Surgeonsにて発表した。
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