研究実績の概要 |
上顎正中過剰歯が原因となり、永久歯の萌出障害、歯列不正などを生じる。 従って、上顎正中過剰歯を早期に診断、治療するために発症要因を探索することは重要である。 上顎正中過剰歯は家族性に発症することがあり、遺伝要因の関与が強く示唆されている。しかし、発症の原因は未知である。 令和元年度は、動物モデルにおいて上顎過剰歯の発症に関与するLRP4 (low density lipoprotein receptor-related protein 4) 遺伝子の一塩基多型(single nucleotide polymorphism: SNP)をヒトにおいて調査することにより、 LRP4が上顎正中過剰歯の発症に関与するかどうかを調査した。本学部倫理審査委員会の承認を得て実施した。被験者として、 家族性に上顎正中過剰歯を発症した者23人を上顎正中過剰歯群とし、 コントロール群は、上顎正中過剰歯がなく家族歴も無い者23人とした。 ゲノムDNAの抽出は、 治療のために抜去した上顎正中過剰歯に付着した軟組織、 または唾液から得た。ヒトにおいてもLRP4遺伝子の存在が確認されたため、 LRP4遺伝子内の日本人高頻度のSNPsであるrs10838623、rs2306033、rs6485702、rs898604を用い、Taqman PCR法にてジェノタイピング解析を行った。 結果として、4つのSNPのアレル頻度において、正中過剰歯群とコントロール群の間に統計学的な有意差は認められなかった(rs10838623, P=0.13, rs2306033, P=0.06, rs6485702, P=0.06, rs898604, P=0.13)。コントロール群における5つのSNP頻度はHapMapデータベース上の日本人の頻度と近似値を示した。
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