研究課題/領域番号 |
19K10418
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
真柳 弦 東北大学, 歯学研究科, 助教 (10451600)
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研究分担者 |
柳田 保子 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10282849)
鷲尾 純平 東北大学, 歯学研究科, 講師 (20400260)
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 根面う蝕 / 脱灰 / タンパク質分解 / 細菌 / 唾液 |
研究実績の概要 |
う蝕は、歯面に付着するバイオフィルム中の細菌が糖代謝し、産生した酸により歯の表面が脱灰されて生じるため、歯質脱灰を検討する際には、pHやカルシウムイオン(Ca2+)濃度などを同時かつ連続的に測定するマルチイオンモニタリングが必要である。 今年度は、マルチイオンモニタリングによる無機質脱灰評価を可能にするため、カルシウムイオン濃度変化と同時に、ナトリウムイオン、カリウムイオンやpHなどを連続的に測定可能なマルチイオンマイクロデバイスの開発を目指し、複数個の小型な平面形状のイオン選択電極(Solid Contact Ion Selective Electrode(SC-ISE))を作製した。これを用いてカルシウムイオン濃度応答性を検討した。 イオン選択電極を作製する基板をポリイミドフィルムからポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムに変更し、金を蒸着してAu電極を作製することによりイオン選択膜の電極基板への密着性向上を図った。またイオン-電子交換体として導電性ポリマー(PEDOT-PSS)を用い、イオン-電子交換体とイオン選択膜の層を形成した。参照電極の作製は銀/塩化銀(Ag/AgCl)インクを用いた。カルシウム標準溶液(1×10-8~10-1M)を用いて1.0sごとにCWISE、SC-ISEの計2電極の電位を測定した。SC-ISEは62.3mV/log[Ca2+]、CWISEは63.3mV/log[Ca2+]の傾きが得られ、動作範囲はSC-ISE、CWISEともに1.0×10-1~1.0×10-3の間であった。 今年度作製したSC-ISEは薄膜化、構造の簡素化を実現しながら、動作範囲を向上させることができたため、今後のマルチイオン測定デバイスの開発に貢献できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、酸(水素イオン)とカルシウムイオンを同時にかつ連続的に測定できるマルチイオンデバイスを開発し、研究代表者らがすでに確立している既存の歯質-細菌インターフェイス測定モデルに組み込み、う蝕の無機質脱灰評価法を構築する予定であったが、マルチイオンデバイスの開発の過程で、測定に最適な条件設定等に当初の予想よりも時間を要したためこの区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
酸とカルシウムの動態を同時に測定するマルチイオンデバイスを開発し、う蝕の無機質脱灰評価法を構築する。ウシの歯質(歯冠エナメル質および歯根象牙質)表面に、う蝕関連細菌および根面う蝕との関連性が示唆されている細菌により、人工的にバイオフィルムを形成する。バイオフィルム内の細菌の糖代謝・酸産生中のpHおよび歯質表面から人工バイオフィルム内に溶出するカルシウムをマルチイオン測定デバイスを用いて連続的にモニタリングすることにより、脱灰が生じるpHおよびその持続時間などを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)次年度使用額は、う蝕の無機質脱灰評価法の構築が当初の計画通り進まなかったため、使用する予定であった細菌培養用培地類やプラスチック器具などの物品費(消耗品)が少なくすんだために生じたものである。
(使用計画)令和元年度請求額とあわせて、マルチイオン測定デバイスの開発およびう蝕の無機質脱灰評価法を構築するために必要な経費として使用する予定である。
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