研究課題
根面齲蝕に対して適切な予防・治療を行うことは、口腔機能を生涯にわたり維持するために重要な課題である。今年度は根面組織に内在するタンパク質分解酵素活性の分布やその活性化を明らかにするとともに、その抑制物質について検討した。ウシの中切歯歯根部を水平断し、歯質片を作製し、それを酸溶液に48時間浸漬し、酸処理した。次いで、pH 7.0、pH 5.5に調整したタンパク質分解酵素活性検出用蛍光基質に浸漬し、蛍光実体顕微鏡を用いて歯質中のタンパク質分解酵素活性の検出を行った。さらに、脱灰および非脱灰歯質片に、クロルヘキシジン(CHX)、フッ化ジアンミン銀(SDF)、フッ化ナトリウム(NaF)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の各種物質を濃度や作用時間を変えて作用させた。その後、タンパク質分解酵素活性検出用蛍光基質溶液(pH 7.0)に浸漬し、タンパク質分解酵素活性の検出を行った。その結果、歯根歯質片のタンパク質分解酵素由来の蛍光強度は、非酸処理側と比べて酸処理側が統計学的有意に大きくなった。また、CHXは作用濃度に依存して、SDFでは作用時間に殆ど依存することなく、蛍光強度を抑制した。EGCGとCa(OH)2は、作用濃度に関係なく一定レベルまで統計学的有意に蛍光強度を減少させた。本研究の手法によって、歯根の組織構造を損なうことなく、歯根組織内のタンパク質分解酵素活性の分布とその活性、酸による酵素の活性化、各種物質による酵素活性の阻害効果を評価することが可能となった。本研究全体を通じて開発が進められたマルチイオン測定デバイスを無機質の脱灰評価へ応用し、さらにin situ歯根タンパク質分解酵素測定法によりタンパク質分解抑制の評価を行うことで、根面齲蝕に効果的なイオン、薬剤、材料などを検討し、根面齲蝕の抑制に寄与できるものと考えられる。
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