研究課題/領域番号 |
19K10426
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
福井 佳代子 (真柄佳代子) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (10181611)
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研究分担者 |
仲村 健二郎 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (00227894)
桑島 治博 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (80139310)
今井 あかね 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 教授 (60180080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Candida / シスタチン / システインプロテアーゼインヒビター / 薬剤耐性 / CDR1 / ラクトフェリン / オーラルフローラ |
研究実績の概要 |
高齢化社会において健康寿命の延伸は重要な課題である。高齢者の多くは基礎疾患をもち口腔衛生状態不良なため日和見感染菌であるカンジダ菌が増殖しやすく、そこから誤嚥性肺炎を引き起こす場合がある。そこで、オーラルフローラを調節し、唾液中タンパク質の関連薬物によりカンジダ菌増殖を抑制し、健康寿命を延伸するという目的で、唾液中タンパク質、および関連物質の抗真菌作用を調査した。 培地上で微量液体希釈法により、カンジダ菌へのシスタチンおよびラクトフェリン単独の抗真菌作用を調査した。シスタチン、ラクトフェリンどちらも単独で濃度依存的に抗真菌作用が認められた。 現在、アゾール系抗真菌薬フルコナゾールの薬剤耐性が問題となっている。薬剤耐性菌におけるフルコナゾールとシスタチンまたはラクトフェリンの相互作用を微量液体希釈法により調査した。フルコナゾール単独よりも、シスタチンまたはラクトフェリンと合わせて使用すると抗真菌作用が増強した。ラクトフェリンを併用することで薬剤排出ポンプCDR1を組み込んだ耐性株においてフルコナゾール耐性を解除し、抗真菌作用を示すことが明らかになった。シスタチンSは、耐性株においてフルコナゾールの耐性解除作用は認められなかったが、薬剤排出に関連する主要な7個のトランスポーター遺伝子を欠損した親株においてフルコナゾールの感受性を高めた。シスタチンによる耐性解除の作用機序は薬剤排出ポンプCDR1ではないことが明らかとなり、作用機序は不明だが、抗真菌作用を示すと考えられる。 フルコナゾール耐性にたいしてシスタチンやラクトフェリンを併用することで耐性を解除し、抗真菌作用を示すことが明らかになり、薬剤耐性の解決の糸口になると考えられる。また、シスタチンSに類似する卵白シスタチン、シスタチンC、ロイペプチンなどの抗真菌作用を調べたが、シスタチンSと同様の抗真菌作用は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウイルスの影響で、注文した薬品などの海外からの輸入が滞り、受け取るまでに月日がかかり、思うように実験が進まなかった。それ に加え、授業や実習がWebに変更になった為その対応に追われ、また自宅勤務となる日もあり、これらもまた実験の進みを遅らせた。更なる要因として、唾液中シスタチンSは高額な為、類似物質である卵白シスタチンやシスタチンC、ロイペプチンなどを代用薬として微量液体希釈法を用いてCandida菌増殖抑制作用を調べたが、シスタチンSと同様の抗真菌効果は認められなかった。この為、継続して唾液中タンパク質関連物質で有効な抗真菌薬を検索していく。 なお、本研究課題の趣旨から若干逸れるが、新型コロナウイルスの影響で注文した試薬が届かない間を利用して、7-benzylidenenaltrexone, 3-Octen-2-one, (E)-2-Octyl-2-dodecanalやTrans-β-Nitrostyreneなどのマイケルアクセプターの薬剤耐性解除作用を調べた。その結果、耐性株においてこれらの試薬にFLCZの耐性解除作用が認められ、特にTrans-β-Nitrostyreneは、これまでに知られた低分子解除薬中で最も強い作用を示し、耐性解除薬開発におけるリード化合物になり得る可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
Candida. albicans (C.al) 増殖抑制とタンパク質の関与(Disc法、微量液体希釈法):唾液中タンパク質関連物質を持つ天然由来成分を検索し、Candida菌増殖抑制作用を調べる。C.al含有培地を作製し、タンパク質関連物質を含ませた濾紙とともに培養し、阻止円を確認し、Disc法で薬剤感受性試験を行い、抗真菌効果をみる。また、微量液体希釈法によりタンパク質関連物質のMIC測定を行い、評価・検討する。 口腔カンジダ症マウスにおける抗真菌作用:実験的口腔カンジダ症マウスを作製し、抗真菌作用がみられた薬物を投与し、有効性と安全性を確認する。マウスに対する有効量と致死量を確認する。総括し、唾液中タンパク質の働きから真菌予防薬開発に発展させ、学会発表を行う。さらに得られた結果を取りまとめ、論文を完成させて公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナウイルスの影響により、ほとんどの学会がWeb開催となり、学会用の旅費の支出がなかった為、次年度使用額が生じた。 今後の使用計画としては、新型コロナウイルスの影響でマスクやグローブ、試薬など様々なものが価格上昇しており、その価格上昇分に使用する予定である。
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