研究課題/領域番号 |
19K10427
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
猿田 樹理 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (30454151)
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研究分担者 |
槻木 恵一 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00298233)
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
内田 裕之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40327630)
東 雅啓 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (70707348)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 唾液 / 代謝プロファイル / 精神疾患 / 診断マーカー |
研究実績の概要 |
近年、複雑な社会環境により精神疾患に罹患した歯科受診患者が急増している。しかしながら、精神疾患の病態は複雑で、未だ原因が解明されていないのが現状である。また精神疾患の診断法は、問診や臨床症状を基にした主観的な診断が主体であるが、病態が複雑であることから診断の客観的評価法の確立が必須である。 そこで本研究では、精神疾患患者の唾液を採取して代謝産物の観点からメタボロームマッピング解析を行い、唾液成分と精神疾患の関連性を科学的に解明する。また、精神疾患特異的な唾液由来マーカーの探索を行うことで、精神疾患の客観的指標となる新しい診断法の確立を行うことである。 本年度の具体的な研究目的は、精神疾患モデルラットの確立とその疾患モデルラットの唾液中の精神疾患特異的代謝産物の検討である。まず、三大精神疾患であるうつ病・統合失調症・不安障害を示すモデルラットの確立を行うことができた。 さらに、これら3種類のモデルラットとコントロールラットの唾液を採取し、唾液間で濃度変化が大きい代謝産物の探索を行った。CE-MSは、同じ物質を測定しても、測定ごとにピークの位置が大きくズレ、複数のデータを比較することが難しいので、我々は独自のアルゴリズムを用いてこのズレを高精度に補正し、多数の測定結果を容易に比較できるディファレンシャル解析を用いて解析を行った。この解析を用いて、コントロールと3種類のモデルラットの唾液代謝産物で大きな違いのあった物質を検出することができたことは、次年度につながる大きな研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した、本年度の研究計画である、三大精神疾患(うつ病・統合失調症・不安障害)モデルラットの確立を行うことができたこと。 さらにうつ病・統合失調症・不安障害のモデルラットの唾液からディファレンシャル解析を用いて、コントロールと3種類のモデルラットの唾液代謝産物で大きな違いのあった物質を検出することができた。 本年度の予定であった、特定された代謝産物に関わる微量アミノ酸・酵素・タンパク質や関連する遺伝子の特定が進んでおらず、代謝経路に関連する遺伝子およびタンパク質の解析を次年度中に行う準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ディファレンシャル解析を用いて得られた、コントロールと3種類のモデルラットの唾液代謝産物で大きな違いのあった物質をそれぞれ分子生物学的な手法を用いて検討する予定である。 複数の物質を同時に見ることで濃度変化のパターンからロジスティック回帰モデルを用いて3種類のモデルラットの唾液から精神疾患特有の代謝プロファイルを同定し、代謝マップを作成することで精神疾患の発症機序の解明を行う。さらに唾液を詳細に検討するために、各モデルラットごとに同定された代謝産物をそれぞれELISA法およびwestern blot法で定量的に解析する 。可能であれば得られた代謝プロファイルより特定された代謝産物に関わる微量アミノ酸・酵素・タンパク質や関連する遺伝子の特定も行う。代謝経路に関連する遺伝子およびタンパク質の解析を行うことで精神疾患の病態解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予定であった、特定された代謝産物に関わる微量アミノ酸・酵素・タンパク質や関連する遺伝子の特定が進んでおらず、代謝経路に関連する遺伝子およびタンパク質の解析を行わなかったため、その分の予算を次年度使用とすることとした。次年度は代謝経路に関連する遺伝子およびタンパク質の解析を行うためこの分の予算を使用する。
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