研究課題
近年、複雑な社会環境により精神疾患に罹患した歯科受診患者が急増している。しかしながら、精神疾患の病態は複雑で、未だ原因が解明されていないのが現状である。また精神疾患の診断法は、問診や臨床症状を基にした主観的な診断が主体であるが、病態が複雑であることから診断の客観的評価法の確立が必須である。そこで本研究では、精神疾患患者の唾液を採取して代謝産物の観点からメタボロームマッピング解析を行い、唾液成分と精神疾患の関連性を科学的に解明する。また、精神疾患特異的な唾液由来マーカーの探索を行うことで、精神疾患の客観的指標となる新しい診断法の確立を行うことである。本年度の研究目的は、精神疾患患者の唾液を用いて精神疾患特異的代謝産物の検討をすることである。精神疾患の患者としては、うつ病、統合失調症患者、および健常者それぞれ20名づつの唾液および血液を採取することができた。これらの唾液および血液間で濃度変化が大きい代謝産物の探索を行った。CE-MSは、同じ物質を測定しても、測定ごとにピークの位置が大きくズレ、複数のデータを比較することが難しいので、我々は独自のアルゴリズムを用いてこのズレを高精度に補正し、多数の測定結果を容易に比較できるディファレンシャル解析を用いて解析を行った。この解析を用いて、健常者とうつ病および統合失調症患者の唾液および血液代謝産物で大きな違いのあった物質を検出することができたことは、次年度につながる大きな研究成果である。
3: やや遅れている
申請書に記載した本年度の研究計画では、急性期の患者や、さらに不安障害のある患者の検体を採取予定であったが、本年度の採取はできなかった。また、被験者数に関しても150名ずつを予定していたが、コロナ禍の状況下で予定被験者数が集まらなかった。また研究の進捗がやや遅れている理由の一つが、コロナ禍の影響で普段使用している試薬、抗体、ELISA Kitの納入が非常に遅れている物があるため。
現在、他社の試薬、抗体、キットなど代替え品で対応できる物は対応している。今後は、ディファレンシャル解析を用いて得られた、うつ病、統合失調症および健常者の唾液および血液双方の代謝産物で大きな違いのあった物質をそれぞれ分子生物学的な手法を用いて検討する予定である。さらに前年度までの動物実験で得られたデータとも比較する予定である。また、予定検体数が少ないことから、継続的に次年度以降も検体を収集予定である。ヒト血液および唾液の検体から複数の物質を同時に解析することで濃度変化のパターンからロジスティック回帰モデルを用いて精神疾患特有の代謝プロファイルを同定し、代謝マップを作成することで精神疾患の発症機序の解明を行う。さらにヒト唾液を詳細に検討するために、動物実験で得られたデータとも併せて、同定された代謝産物をそれぞれELISA法およびwestern blot法で定量的に解析する 。可能であれば得られた代謝プロファイルより特定された代謝産物に関わる微量アミノ酸・酵素・タンパク質や関連する遺伝子の特定も行う。代謝経路に関連する遺伝子およびタンパク質の解析を行うことで精神疾患の病態解明を行う予定である。
コロナ禍の影響により、試薬などの購入が滞っている状態で、使用予定の希望通り、購入ができない状態が続いているため、その分の予算を次年度使用することとした。現在も発注中である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 7件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (10件) 備考 (2件)
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