研究課題/領域番号 |
19K10429
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
嶋崎 義浩 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (10291519)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔保健 / 歯科医療 / 健康増進 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
口腔と全身の健康の関連への関心や重要性への認識は年々高まっている。本研究では、口腔の健康維持に対する国民の意識を向上させ、歯科口腔保健の向上を目的とする健康政策をさらに拡充させるために、保健・医療の様々なヘルスケア関連ビッグデータを活用した研究を行う。 協会けんぽ加入事業所の従業員を対象に、口腔保健教育により歯科受診勧奨を行う大規模な介入を行い、口腔健康状態の維持や改善による全身の健康状態さらには医療費への影響について検証するためのベースライン調査を行った。協会けんぽ愛知支部に加入する事業所より、歯科健診の実施を希望する事業所を募り、約30の事業所の約500名に対して、口腔内診査とその結果に基づく口腔保健指導を行った。歯科健診と同時に、口腔保健習慣等に関する質問紙調査を行った。また、歯科健診を実施しない事業所の中から質問紙調査の実施に協力が得られた事業所の従業員に対して、歯科健診実施者と同じ質問紙調査を実施した。データを入力・整理した後に、集計・分析するとともに、協会けんぽが保有する特定健診データおよび医療費レセプトデータと連結して、口腔の健康と全身の健康および医療費との関連について分析を行う予定である。 愛知県内の某健康保険組合の従業員の健診データおよび歯科医療費レセプトデータを用いた分析を行った結果、歯科受診の無い者に比べて歯科を定期的に受診する者では多数歯喪失のリスクが有意に低いことが明らかとなった。 後期高齢者の歯科・医科の健診データおよび医療費のビッグデータの解析を進めており、高齢期まで健康な口腔を維持することによる全身の健康増進効果および医療費抑制効果を示すための分析を行ったいる。さらに、全国規模の歯科受診患者調査により得られたビッグデータの分析を行うことで、歯科医院における口腔保健指導が患者の歯の喪失に抑制的に働いていることを示すための分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では複数のビッグデータをもとに分析を行っており、既存のデータを用いる分析では概ね順調に分析作業を進めている。一方、協会けんぽの従業員に対して歯科健診を実施する調査では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、歯科健診を予定通りに実施できない事業所が出てきたため、思ったようにデータを集めることが困難となった。また、収集したデータを電子化するための委託業者の業務が制限されたことにより、データ入力作業が予定よりも遅れており、データ分析に取りかかれない状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
協会けんぽの調査については、できるだけ早くデータ入力を完成し、データ分析に取りかかれるように準備を進めていく。歯科健診データおよび質問紙データと特定健診データおよび医療費レセプトデータを連結させることで、口腔の健康状態が全身の健康や医療費に及ぼす影響、歯科受診を口腔の健康および全身の健康との関連、歯科健診および保健指導後の歯科受診に対する行動変容と全身の健康状態との関連等について分析を行っていく予定である。 後期高齢者のデータ分析については、追跡データを連結させていくことで、口腔の健康と全身の健康や医療費との関連を調べていくことで、高齢者における口腔と全身の健康の関連を明らかにしていく予定である。 全国規模の歯科受診患者データの分析では、歯科医院における口腔保健指導が患者の歯の喪失に対して抑制的に働いていることについて纏めて、学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度は、調査計画について打ち合わせを行った後に、年度後半から調査を開始したが、新型コロナウイルス感染症の影響により、調査を予定通りに実施できなかったために次年度使用額が発生した。次年度使用額は、翌年度分と合わせて調査研究に使用する予定である。
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