研究課題/領域番号 |
19K10435
|
研究機関 | 日本歯科大学東京短期大学 |
研究代表者 |
大島 克郎 日本歯科大学東京短期大学, その他部局等, 教授(移行) (40409230)
|
研究分担者 |
安藤 雄一 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80168046)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 歯科技工 / 需要・供給分析 / 補綴装置 / 義歯 / 社会医療診療行為別統計 |
研究実績の概要 |
近年,就業歯科技工士数は約3万5千人前後を推移しているが,高年齢層の増加と若年層の減少傾向が著しいことから,将来的に大幅に減少することが予測される.しかし,歯科技工士の社会実態を数量的に評価した研究報告は少なく,今後の見通しについても不明瞭な点が多々ある.そこで本研究では,歯科技工の需要・供給分析を行い,歯科技工士の減少傾向が将来的に歯科補綴治療に及ぼす影響を検討する.研究初年度(2019年度)は,大きく以下2点の分析を行った. 1)地域の歯科診療所における歯科技工状況を把握するため,対象地域として島根県を選定し,同県内における歯科技工状況等のデータの収集・分析を行った.分析対象は,島根県歯科医師会会員歯科診療所252施設に郵送法自記式質問紙調査を行い,回答が得られた196施設(回収率:77.8%)とした.本分析の結果,歯科診療所での歯科技工士減少の徴候が明らかになった.約半数の施設が歯科技工所での後継者不在の経験等を有しており,多くの施設が近隣の歯科技工所に発注していることから,将来的に歯科技工士減少による補綴装置製作への影響が表面化する可能性が示唆された. 2)歯科技工の需要を分析するため,各種義歯の将来予測を行った.方法は,社会医療診療行為別統計等の政府統計データを用いて,ブリッジ(Br),有床義歯-少数歯欠損(PD_S),有床義歯-多数歯欠損(PD_L),有床義歯-総義歯(FD)の新製件数を分析のアウトカムとして,2021・2026・2031・2036・2041・2046・2051年の将来予測値を算出した.本分析の結果,各種義歯の新製総数の将来予測値は,Brはやや減少,PD_Sは横ばい,PD_LとFDは漸増~横ばいに推移すると予測された.全種義歯の新製総数は2026~2031年まで漸増し,その後は漸減すると予測された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度(2019年度)においては,地域の歯科診療所における歯科技工状況を詳細に把握するため,対象地域として島根県を選定し,同県内における歯科技工状況等のデータの収集・分析を行った.この結果,当該地域における歯科診療所での歯科技工士減少に関する徴候等の実態を把握することができた.また,今後の歯科技工の需要を分析するため,社会医療診療行為別統計等の政府統計データを用いて,各種義歯の将来予測を行った.この結果,各種義歯の新製総数の将来予測値を算出することができた. 以上のことから,本研究は当初の研究計画通りおおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として,研究初年度(2019年度)に得られた島根県の歯科技工状況等のデータを用いて,補綴装置製作数と歯科診療所の特性との関係について分析する.この分析に基づき,当該地域の歯科診療所における歯科技工の需要の実態を明らかにする.また,各種政府統計データを用いて,歯科技工の需要(補綴的処置等)と供給(就業歯科技工士数等)の両面から分析し,歯科技工需給の中長期予測を行う.併せて,Web調査等の手法を用いて,国民(患者側)の補綴的処置等に対する需要の詳細について分析を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2020年度)に必要な経費が当初の予定よりも増加する可能性が高くなったため,本年度の支出を抑えた.
|