研究課題/領域番号 |
19K10441
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 晴江 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30397145)
|
研究分担者 |
藤井 規孝 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90313527)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 動画教材 / 診療姿勢 / 専門的機械的歯面清掃 |
研究実績の概要 |
患者が抱える全人的な問題を正確に発見する,すなわち診る能力は医師・歯科医師にとって必須であり,歯科医師として「診る」ためには「見る」技術の習得が必要不可欠である。しかしながら歯科治療は口腔内という狭小な空間で行われる専門的な治療であり,その作業空間には歯だけではなく,粘膜や舌また場合によっては唾液や血液により術者にとっても視野を確保することは容易ではない。当然通常の治療見学から学修者である歯学生がそこから得る情報は限られたものであり,模倣するには不十分である。そこで本研究では術者目線の教材を作成し,その教材を学修者に見せることで「見える」ことを体感させ,その後の学修者の「見る」能力に生じる変化についての解析を行う。 専門的機械的歯面清掃(PMTC)は熟練した歯科医師,歯科衛生士が機械的清掃器具を用いて全ての歯面からプラークを取り除く処置である。適切にPMTCを実施するには全ての歯面に対して適切に器具を当てること,全ての歯面を見る技術が必要とされる。そこでプラークを模す色素を塗布した模型をマネキンに装着し,被験者にPMTCを実施させたところPMTC後にも色素が残存している部位があることが確認された。残存した部位を被験者に確認させたのち,清掃器具の取り扱いについての技術的な指導は行わず再度その部分の清掃を行わせたところ概ねプラークを模した色素を除去することができたことから色素を残存させたのは見る技術の不足が一因である可能性が高いことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題申請の際には,まずはじめに見えることを体感させるための術者目線の動画教材を作成したのちに,その教材が与える影響を解析することを計画していた。しかしながら口腔内全体について実施する動画は長時間となり影響する因子が多く,解析が困難である。そこでまず,被験者とする学生もしくは臨床経験の少ない歯科医師らが現状どういった原因で見ることができていないのか,またどこを見ることができていないのかについて解析を行うこととした。2019年度の解析結果から見ることができていない口腔内の部位について一定の傾向があることを認めた。また,見ることに影響を与える因子として術者の診療姿勢についての解析もおこなったが,2019年度の解析結果では個人差が大きく,一定の傾向は認められなかった。効果的な動画教材作成のためのデータを集めることはできているが,計画していた動画教材作成には至っていないため,やや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度も引き続き見ることに影響する因子について被験者数を増やし解析を行う。またそれと並行して2019年度に得られたデータを元に動画教材の試作品を作成し,その動画教材の視聴有無が被験者の見る能力に与える影響について解析を行う。作成する動画教材は1つではなく,2パターンをあらかじめ準備する。被験者を動画教材を視聴しない群,動画教材1を視聴する群,動画教材2を視聴する群の3群に分け,解析を行うことにより,より効果的な動画教材を作成するために,見る技術に影響を与える因子の検索推進を図る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動画教材作成のための機材準備を初年度に予定しており,その経費が初年度経費の大きな割合を占めていた。しかしながら研究計画を変更し教材作成が次年度となったことからその分の経費を次年度使用額にくりこすこととなった。そのため次年度使用額が生じた。次年度には初年度に購入を計画していた動画教材作成のための機材と材料の購入を予定としており,繰り越された次年度使用額はその購入に使用予定である。
|