平均的な日本人集団である福岡県粕屋郡久山町の住民の内、2007年に実施された40歳以上の全成人を対象とした一斉健診を受診し、かつ2012年と2017年に実施された同様の一斉健診を共に受診した者で構成される10年コホート集団を解析の対象者に設定した。このコホート集団の内、調査開始時に喘息の既往歴がなく、調査期間を通して歯数が0本ではなく、かつ分析に使用する項目に欠損がなかった978名(男性 412名、女性 566名)を分析対象とし、調査期間を通した歯周病の重症度と気流閉塞(COPDの前駆症状)の割合との関連を検討した。 各健診時に米国国民栄養調査の調査基準に従って実施された歯周組織検査により、各時点におけるポケット深さ(PPD)とアタッチメントロス(CAL)の検査値データを得た。米国疾病予防管理センター(CDC)と米国歯周病学会(AAP)のワーキンググループによって2007年に提案(2012年に修正)された定義に従い、PPDとCALの値に基づき、各時点における歯周病の重症度を、健全もしくは軽度・中等度・重度の3段階で評価した。また各時点における気流閉塞については、GOLDの判定基準に従い、各健診時に実施された気管支拡張薬吸入前のスパイロトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満の場合に、気流閉塞ありと判定した。 多変量マルチレベル修正ポアソン回帰分析を用いて、性別や年齢、喫煙状況(Brinkman Index)などの共変量を調整した解析を行った結果、調査期間を通して歯周病の重症度が高いほど気流閉塞の割合が高いことが示された(傾向性のp値=0.039)。特に歯周病の重症度が重度の者は、健全もしくは軽度の者と比べて、調査期間を通して気流閉塞の割合が1.40倍(95%信頼区間 1.06-1.85)高いことが明らかになった。
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