研究課題/領域番号 |
19K10450
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
広瀬 弥奈 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (10265077)
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研究分担者 |
八幡 祥子 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10285538)
福田 敦史 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (10453276)
村田 幸枝 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (90455676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 / 唾液 / MRSA / 新規市中感染型MRSA |
研究実績の概要 |
2019年12月からの1年1か月間、唾液と手掌をスワブした。対象者は同意の得られた本院スタッフ29名、患者72名の計101名(0~83歳)で、患者の11名からは口腔内病巣スワブも採取した。ブドウ球菌を分離培養後、DNAを抽出し、PCRによりmecA、PVL遺伝子等を検出した。S.aureusについては、コアグラーゼ(coa)型別、MLST解析、メチシリン耐性株に対してはSCCmec型別を行った。coa陰性ブドウ球菌(CNS)は、16SrRNA遺伝子の解析により菌種を同定した。18種類の抗菌薬への感受性を微量液体希釈法により測定し、薬剤耐性遺伝子をPCRにより検出した。結果を以下に示す。 (1) 得られた総株数は、S.aureusが69株、CNSが125株で、S.aureusとCNSの検出率はそれぞれ、唾液:39.6%(内MRSAが2.0%)、9.9%;手掌:20.8%、70.3%;両方:13.9%、8.9%;病巣:45.5%、27.3%であった。 (2) メチシリン感受性黄色ブドウ球菌のMLST解析では、17種類のSTが同定され、ST15(10株)、ST8、ST12、ST97、ST188(各7株)、ST30(6株)、ST45、ST121(各5株)、ST20(4株)の順に多かった。MRSAの遺伝子型はcoaIIIa-SCCmecIVl-ST8、coaIIIa-SCCmecIVa-ST6562であり、後者はPVL遺伝子を保有していた。CNSは計14種が同定され、S.warneri(41株)、S.capitis(40株)、 S.saprophyticus(11株)、S.epidermidis(9株)が多かった。mecA保有株は10株(8%)でS.saprophyticus(5株)に多かった。 (3) S.aureus、CNSはそれぞれ以下の耐性率を示した。AMP:50.7%、18.4%;ERY:20.3%、26.4%;GEN:13.0%、8.8%;FOF:0%、48%。 S.aureusは唾液、CNSは手掌からの検出率が高く、唾液と手掌の両方から検出されたS.aureusの遺伝子型をみると、唾液と手掌で同じ型が検出された者は9人中5人であった。低頻度ながらmecA陽性株が検出されたため(6.1%)、市中におけるメチシリン耐性ブドウ球菌の蔓延状況を継続して調査する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、来院患者100名、病院スタッフ50名、学内歯科健診を受診した学生300名を対象に、口腔と手指に分布するブドウ球菌種について、分子疫学的特徴と薬剤耐性遺伝子、病原遺伝子の分布を調べ、一部を日本小児歯科学会、日本口腔衛生学会(いずれもweb開催)で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス流行下にあり、歯科健診受診者や来院患者のサンプル採取が困難な時期もあったが、今後も細心の注意を払いつつ、丁寧な説明を行い同意の得られた人の口腔から分離されるブドウ球菌種の分子疫学的解析を継続していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、患者さんのサンプル採取が困難な時期もあったため、特に上半期は実験を遂行することができなかった。また、国内学会の発表もweb開催になったことにより、旅費がかからなかったため。
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