研究課題
今年度は昨年度までにサンプリングが終了した、NASH(非アルコール脂肪性肝炎)とNASH由来肝がん(NASH-HCC)の被験者の歯周病原細菌と腸内細菌のメタゲノム解析を行い、NASH-HCCと歯周病原細菌および腸内細菌の関連性を検討した。横浜市立大学附属病院消化器内科に通院または入院しているMASH患者41名およびMASH-HCC患者19名を被験者とし、洗口吐出液の採取と糞便の回収を行った。採取したサンプルから細菌DNA抽出、16S rRNA遺伝子の増幅、MiSeq シーケンサーによる塩基配列の解読および細菌叢解析を行った。結果として、NASH患者に比べて、NASH-HCCの糞便中におけるButyricicoccus属とRoseburia属の占有率は有意に低く、Fusobacterium属は有意に高かった。因果関係を示すベイジアンネットワーク解析の結果、歯周病原細菌は肝臓がん発症に影響を与えていなかった。NASH-HCCが口腔内の歯周病原細菌と糞便中細菌に影響を与えていることが判明した。また、口腔内P. gingivalisが、肝臓がん発症への関与が報告されている糞便中Blautia属とButyricicoccu属に間接的に影響していた。これらの結果から、NASH-HCCが口腔内の歯周病原細菌と腸内細菌に対し、直接的に影響を与えていることが示唆された。また,口腔内P. gingivalisがHCCと関連している腸内細菌に対して、間接的に影響している可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
日本歯科保存学雑誌
巻: 67 ページ: 10~19
10.11471/shikahozon.67.10