研究課題/領域番号 |
19K10455
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
平嶺 浩子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (30386841)
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研究分担者 |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20247315)
渡辺 清子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (70148021)
児玉 利朗 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20170269)
小牧 基浩 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (30401368)
山海 直 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (80300937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周炎 / Porphyromonas macacae / カニクイザル |
研究実績の概要 |
本研究では、歯周炎罹患サルの歯垢サンプルからの歯周炎の病原細菌の特定および分離菌株の病原因子、伝播経路を解明することを目的として行われている。 当該年度(2019年度)は、① カニクイザルの歯周ポケットから分離、報告されているPorphyromonas macacae (P. macacae) について、P. macacae 感染により誘導するラット実験的歯周炎モデルを用い、歯槽骨吸収について検討、② カニクイザル口腔から綿棒を用いて歯垢を採取し、DNAを抽出し菌種特異的PCRプライマーを用いて菌種の存在と鑑別の検討、ならびに ③ 歯垢細菌の分離と性状解析について検討した。 その結果、① 実験的歯周炎では、P. macacae感染群は、非感染群と比較し、明らかな歯槽骨吸収が認められた。また、P. macacae感染群は、ヒト慢性歯周炎の原因細菌であるP. gingivalis 感染群とサルやネコの歯周病原細菌であると考えられているP. salivosa 感染群と同程度の歯槽骨吸収が認められた。② 菌種特異的アミノ酸配列である16S ribosomal DNA (rDNA)をターゲットとしてprimerを設計した。カニクイザル口腔内の歯垢からDNA抽出を行い、PCR法を用いた結果、P. macacaeは、全体の57%検出された。③ 口腔内細菌の分離は、BHI血液寒天培地とPorphyromonas 選択培地であるKVLB培地を用いて行った。総菌数と黒色色素産生嫌気性桿菌 (以下BPAR) の比率を算出した。Young群 (0-9歳)、Midle群(10-19歳)、Old群(20歳以上)の全71匹について検討した。歯垢の総菌数は、3群ともに同程度であった。また、BPARはYoung群とOld群を比較すると約5倍、Old群に多く検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、ラットを用いた実験的歯周炎で歯槽骨吸収について検討した。P. macacae感染群は、非感染群と比較し明らかな歯槽骨吸収が認められたため、P. macacaeは、歯槽骨吸収に関わる病原性を有していることが分かった。また、菌種特異的PCRプライマーを用いてP. macacae の検出・同定を試みて、良好な結果が得られた。培養法では、平板培地上に発育したBPAR分離菌株を全てすべて-80℃で保存をしている。BPAR分離菌株は、同定するまでには至っていないが、今後は、性状検査を行いBPAR分離菌株の同定を行っていく。 また、口腔内診査を行う、新たなサンプリングについては、新型コロナウイルスの影響のため、現在は中止している状況であるが今後も検体数を増やしていく予定である。以上の結果については、申請時に予想されたものであり、概ね研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
分離株の菌種の同定(インドール産生性試験、トリプシン様酵素活性、カタラーゼ反応等)一般性状試験用培地にて糖分解性を検査して細菌の同定を行い、年齢または、臨床的な歯肉の炎症、組織破壊程度による細菌叢の違いについて検討を行う。感染伝播経路(水平, 垂直)の検索のために、親子関係を調べる。感染伝播経路については、制限酵素切断パターンの比較を検討する。これまで、ヒトを対象とした研究では明らかにすることが困難であった細菌感染(時期と経路)と歯周炎発症のプロセスに関する検索を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会発表のための旅費として計上していましたが、新型コロナウイルスの影響により学会開催が中止になったため、海外渡航も中止となり、計上することができなかった。 次年度については、細菌培養のための培地や試薬を購入のための物品費としての使用や国内外学会参加費も支出予定である。
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