がん治療において有害事象のひとつである唾液分泌障害は予防が第一であり、支持療法として唾液腺防護剤をがん治療時に同時に使用することが効果的である。唾液腺防護剤の開発には、唾液腺の機能を可視化・数値化できる唾液腺培養系と薬効の検証のために動物モデルが必須となる。そこで、我々はがん治療で特にその傷害が問題となる耳下腺とその機能を反映するアミラーゼ分泌に注目して、“蛍光耳下腺マウス”を作製した。当該研究では、唾液腺の機能を可視化・数値化できる光る耳下腺培養系をこの蛍光耳下腺マウスから単離した耳下腺細胞を利用して構築することと、マウス個体を放射線、化学療法剤暴露の動物モデルとして確立することを目的に実施した。 本年度は、マウスの放射線暴露モデル作製のためマウスのX線照射実験系の構築を開始した。マウスの唾液腺のみに放射線を照射するための鉛の防護板の設計と作製を行い、唾液腺付近のみにX線が照射されることを確認した。マウスの性別や週齢により反応が異なることが予想されたため、まず初めに10週齢の雄を用いて、X線照射装置による放射線の照射強度を決定する実験を行った。7 Gyから17 Gyの照射を実施し、体重や唾液の分泌量を測定したところ、個体差が大きいことがわかった。これは、雄マウスのケンカによる影響が大きいものと考えられた。また、照射強度をあげても可視化できる唾液腺組織の変化は観察されず、炎症メーカーの上昇もみられなかった。今後は、マウスの性別や週齢を変更し、照射強度と飼育日数の検討、唾液腺傷害の指標の探索を実施する予定である。
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